第2話 転校生

 桐原桐華と玲香が俺の両腕を抱いて睨み合いが始まり、時間が経てば経つほど野次馬達が集まり、修羅場が出来上がりつつあった。

 皆に注目される中、俺は二人を振りほどく。


「何なんだよ!いきなり言われても困るし、第一あんたの事なんて俺は知らねえ。行くぞ玲香」


 俺は玲香の腕を無理やり掴んで、その場から離れた。

 しばらく歩いていると、俺達が通う学校が近付いてきた。


「……玲香、もう大丈夫か?」


「う、うん……なんかごめんね?」


「気にすんな。もうすぐ学校着くし、先行けよ」


 俺は普段通りに別々で行こうと提案したが、玲香はそれを拒否するかのように声を上げた。

 声を上げたは良いが、今度は寂しそうな表情。


「……なんだから、一緒に行こ?」


ねぇ……」


 別に玲香を避けてる訳じゃないが、どうしても彼女と住む世界が違いすぎて、隣に居るのが迷惑なんじゃないかって。

 それに玲香にはが居るはずだ。

 俺なんかが隣に居て良いわけがない。


「……ごめん。やっぱり何でもない」


 玲香は泣きそうな何か申し訳なさそうな表情を浮かべながら、俺から遠ざかって友達の輪の中に入って行った。

 俺にはないそんな光景だった。






 ☆







 玲香の後から教室に入った俺は自分の席に向かう。

 ふと玲香が居るであろうグループに視線を向けると、いつも通り楽しそうに話している姿を確認出来た。

 俺は鞄から教科書やノート、筆記用具を出して乱雑に机の中に突っ込む。


「うーっす荻谷、昨日はマジでありがとな。助かったわ」


 俺に話し掛けてきたのは、同じゲーム仲間で昨日一緒にプレイをしていた俺の数少ない友人の大山和人おおやまかずと

 どうやら昨日の事で礼を言いに来たようだ。


「うーっす大山。何かあったらまた呼んでくれ」


「おう!ていうか昨日のお前マジやべえわ。あんなの普通出来ねえよ」


「……まあ一人でずっとやって来たからね」


 昨日のゲームの話で盛り上がっていると、担任が教室にやって来て皆自分の席に戻った。

 だけど、誰も一席が目立つようにあった。


「こんな変な時期だけど、転校生がやってきます」


 周りがざわつき出し女子は女子で盛り上がって、俺を除く男子は女子だったら良いなとか言って教室内が一気に騒がしくなる。


「静かに!……それじゃあ、入ってきて」


 前の扉から入ってきたのはどうやら女子で、すごく大人しめな性格。

 誰がなんて言っても美少女だと言える容姿をして、でもこの顔……って


「「あー!朝の!」」


 俺達はどうしても、叫ばずにはいられなかった。


「荻谷君……やっぱり。」


「えっ……?!」


 桐原桐華は俺の前まで近付いて、クラスメイトが見つめる中彼女は俺の唇を奪った。

 さようなら、俺のファーストキス。

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