合コンの数合わせ感覚で、勇者を呼び出すなよ
「お前なあ。いくらじっちゃんと仲がよかったからって」
腕を組みながら、青年が眉間にシワを寄せる。
わたしたちは、辺境の村にたどり着く。
ランの転送魔法で。
「こんなことができるなら、いつだって帰れたじゃん」
「体力がなくなっていたんだよ。こんなの普通、何年に一回くらいしかできん」
この間やっつけた「
帰るつもりがなかったので、使わなかっただけらしい。
「で、この男性が、勇者?」
「そうそう」
「合コンの数合わせじゃねえんだぞ、ランっ」
ひいき目に見ても、勇者てツラではない。
初対面で申し訳ないが。
まるで、非モテ要素を全部固めてできたような。
「変な客まで連れてきてさぁ。誰なんだ?」
わたしたちを確かめるかのような視線を、勇者はこちらに向けてきた。
「いいじゃねえか。せっかくこのラン様が顕現したんだからよぉ」
「だいたい、厄介ごとしかよこさねえじゃんか。で、今日はなんのようだよ?」
「モテ要素を全部じいさまにスティールされたお前さんに、嫁候補をこさえてきた」
勇者の目の色が変わる。
「嫁だあ? 誰だよ?」
「こいつだ」
ランは、ナナミを前に差し出す。
「あの、月代ナナミです」
「ど、どうも。三代目カスガです。勇者をやっています」
わたしも、互いにあいさつをする。
テーブルに招き、勇者はお茶まで出してくれた。
カスガという勇者は、ランの主人である勇者の孫だとか。
「異形とだけ交信できるスマホ」も受け継いでいて、ランと久々に連絡したという。
祖父が死ぬ間際、勇者カスガから力を受け継いだが、祖父のようにモテたりはしていないそうだ。
で、「ちょうどいいから」とランが都合をつけたらしい。
「父親は、受け継がなかったんだな?」
「じっちゃんが死ぬ頃には、もう五〇だったしな。キツイってさ」
家族が先にできてしまったので、危険なことはしたくなかったという。
三〇になったばかりのカスガ孫が、勇者業を引き受けた。
ナナミの方も、自分の身の上を語る。
「魔法少女ですか。すごいな。オレなんかより、ずっと人の役に立ってます」
「でも、今はただの飲んだくれで」
「とんでもない。今でも、誰かの役に立とうとしている。立派ですよ」
卑屈になるナナミを、勇者は立てる。
悪い男では、なさそうだが。
「それでランさん、私はここで何をすれば?」
「えっとな。普通の男は好みじゃねえんだろ? だったら、ここに住めばどうだ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます