こたつで寝ると、悪夢を見る
「……はっ」
わたしは、こたつの中で目を覚ます。
今のは夢か。
懐かしい夢だったな。
「むう、もうちょっとだったのに」
気がつくと、ドラゴン娘のランが真後ろにいた。
怖気で目覚めたのか。
「何をしようとしていた?」
ジト目で見つめると、ランはバツが悪そうに目をそらす。
「いや、シリアお前、泣いてたからさ。慰めてやろうかと」
「泣いていただと? わたしが?」
ホントだ。枕が濡れているじゃないか。
「怖い夢でも見たのか?」
「いや。ちょっと昔を思い出していた。いわゆる過去編だな」
「シリアお前さぁ、ときどきセリフがメタに走るよな」
ティッシュで拭かないと……おや?
「……わたしの太ももの間に入れた手はなんぞ?」
「だから慰めてやろうと」
どこの世界に、泣いているやつを相手に「手慰み」するヤツがおるんよ。
「手が冷たくってよぉ。あったかくしたかったんだよ」
だったら撫でてくるな。
「お前、マジで一度去勢されちまえよ」
「うるせえ元淫獣枠に言われたかねえ」
「誰が淫獣だ誰が」
わたしは元マスコット枠だ。覚えておけ。
「淫獣はテメエだろうが。しょっちゅうわたしに性的なイチャイチャを求めやがって」
「溜まってんだってぇ。相手してくれよ」
自分の太ももの間に手を入れて、ランはモジモジする。
手を温めているだけなのだが、ブルマ姿なのでなんともセンシティブだ。
「適当にオトコを見繕ってイタしていればいいだろうがよぉ。なんでわたしを抱こうとするかな」
「あんたくらいがちょうどいいんだってぇ」
「やめんかい。思ってても言うないっ」
ガラガラガラ、と、店の門が開く。お客だ。
「ラン、お前行け。罰ゲームで」
「ったく。はいはーいっ今行くっすよーらしゃーい」
お客は女性らしい。中年の女性のようだ。
ランと、なにやら楽しげに話している。
「おいシリアーッ! お客さんがさぁ、晩酌用に甘めの酒を教えてくれってさー!」
わたしとランは、どちらも酒が飲めない。
なので、お酒の味などはさっぱりである。
大将はいない。各飲食店に、宴会用の酒を配達しに行っている。
「はいはーい。お待ちください。メモメモ」
大将のメモを頼りに、酒の棚から口似合いそうな酒を選ぶ。
「……シリア、ちゃん?」
わたしは、その声に聞き覚えがあった。
いや、たしかに覚えている。
さっき、夢の中で聞いたばかりだ。
ややハスキーで少年っぽく。でも口調は少女のそれで。
わたしは、声のした方へ顔を向けた。
やや髪の毛はツヤを失っているが、間違いない。
一本おさげにまとめているところも同じ。
赤茶色の大きなメガネも、あの頃のままだ。
「ナ、ナミちゃん?」
わたしがパートナーを務めていた、元魔法少女だ。
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