サバサバ系のガキ
「奥さんに気を使って、手を出さなかったの?」
「大将の性格からして、それだけじゃない。はじめから、下心ありでわたしたちを保護する気はなかったようだ」
真面目に、死にかけていた私たちを善意で助けてくれたのだ。
その男気に感動して、わたしたちはココで働くことに決めた。
「そんな人もいるのね。男なんてみんなスケベなんだと思っていたわ」
自分の説が覆されて不服なのか、ふてくされたように顔をそむける。
「ま、その男子はお前さんのハダカを想像してオカズにしているだろうけどな」
「やめてよ。気持ち悪い」
チエが、顔をしかめた。
「マスケンだけにマスを」
「言わせねえよ」
ランの頭に、わたしは軽めのチョップを食らわせる。
「お前だって欲求不満だったじゃんっ」
「もうその話は終わったからいいんだよ」
ぶり返すんじゃねえよ。
「ところで、お前の方はどうなんだ? そのヤスケンとかいうやつを」
「私、女のコと遊ぶ方が好きなの。恋愛に興味はないわ。ヤスケンも関係ない」
正直言うと、今回の招待も男子を連れてきた時点で不満だらけだったそうで。
「男子がいると気を使っちゃうでしょ? だから、私が憎まれ役になって本音をぶちまける役を買って出てるの」
「サバサバ系女子気取りか?」
「そうよ。悪い?」
なるほど。それを口実にストレスを発散していると。
「私、将来は仕事と結婚するの! 誰にも頼らず、一人で生きていくの。雑誌でバリキャリ系のインタビュー記事にシビレたわ。『バカと一緒につるんでも、むなしいだけでしょ』って。読んでて、かっこいいと思った。だから、モテなくても全然平気よ。バカと遊んでいても、つまらないもの」
「小学生のうちは、誰だってバカじゃね?」
ランが尋ねると、チエは得意げに語る。
「だからよ。子どものうちからちゃんと勉強してないと、取り残されるわ。うちの親みたいに」
「ふむ。というと?」
「両親ね、事業にちょっと失敗したの。毎日ケンカばっかりしてて。どっちが悪い悪くないって。ああいう大人になんて、なりたくないわ」
ほほう。他人を相手に自分のストレスをぶちまけていた理由はここか。
「だから勉強して、人より上に立つの。モテとか馴れ合いとかなんてゴメンだわ」
「そんなことをしなくても、お前はモテない」
「言えてるわ。今じゃ男子どころか、女子にも嫌われちゃったもの」
「いや。単に元々嫌われていたのが露見しただけだ
また、チエがムッとした。
図星を突かれたら、正論だろうと人は怒る。
「何を怒っているんだ? お前の発言は、人格否定レベルなんだぞ。いくらガキでも、いやガキだからこそ、自覚して学ぶ必要がある。理解して修正できるのは、ガキの間だけだから」
こちらはもう遠慮なく行く。
子どもだからって容赦しない。
「いいか、言いたいことを言っていいのは、自分だって言われても仕方ないと腹をくくったやつだけだ。お前にその覚悟はあったか?」
チエは、黙り込んだ。
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