全裸待機をした過去
よくよく話を聞いていると、どうも悪ガキの方にばかり悪口をぶつけているように思えた。
「そもそも、どうしてその悪ガキばかり目の敵にしているんだ?」
「聞いてよ! あいつ、マスケンっていうんだけど、マスケンのヤツ、去年わたしがお風呂入ろうとしたときに、着替えを覗いたの!」
正確には、丸裸になったときにトイレに行こうとした悪ガキがカーテンを開けたのだそうだ。
「私のおうちって、お風呂の隣にトイレがあって」
「どうしてお前は友だちが来ている中、入浴しようとしたんだ?」
今度は、ランが質問役に回る。
「お泊り会だったの。私の家はお風呂小さいから、交代で入ろうってなって。女子が先に入って、後で男子がって流れになったのよ」
それから、セクハラまがいのことがひどくなったらしい。
「思春期だな」
「うん。思春期だね」
マスケンという少年は、女子を意識しすぎるようになったのだろう。
自身の中に眠る性的な暴走を止めるため、わざと「からかい」という形で発散している可能性が高い。
それを咎められ、今度こそ嫌われたと思って、泣いてしまったのだろう。
「男って、どうしてあんなスケベなの!? 下品極まりないわ! この世にスケベじゃない男子なんていないのよ!」
酒を煽るOLのような口調で、チエはコーラのグラスをガンとコタツに叩きつけた。
「話をしてやろう」
これは、男性のスケベに不快感を持つガキによく話してあげるないようなんだが。
「実はわたしたちは、大将に拾われたとき、大将の布団の中で全裸待機したことがあるんだ」
「えっ!?」
いきなりセンシティブなカミングアウトをさせてか、チエは目を丸くした。
しかし、興味を失っている様子はない。
目が泳いでいるものの、視線は会話の続きを催促している。
「大将は優しくてな。風呂にも入れてくれて、メシも食わせてくれた。わたしたちにはそれが、『身体目当て』だと思いこんでしまったんだ」
風呂で清潔にして、食欲を満たさせてから、自身の性欲を発散するのだろうと。
「あたしなんて、すっごいソワソワしてさ。ずっと心臓が鼓動しっぱなしだった」
「鼓動が早くなったって言えよ。鼓動が止まったら死ぬぞ」
「揚げ足取るなよ。早く話を続けろ」
脱線した。話を戻す。
「……そういうわけで、わたしたちは大将と一夜をともにするしかないと思っていた。拾ってもらった分、今後も性的な奉仕を求められるんだろうなぁと」
「イヤじゃなかった?」
「性的なことは、好きではないかな。でも、大将を信頼はしていた。おそらく紳士的な接し方はしてくれるだろうと、予感はあった」
あとは相手が満足するのを待つだけだ、とあきらめていたのである。
しかし、彼はわたしたちになにもしない。
「服を着て自分の部屋で寝ろ」と、わたしたちを追い出した。
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