葬式

翌日、ひっそりとお葬式が行われた。

僕は淡々と進む時計の針を眺めている気分だった。僕の時計はあの日から動かないのに…

彼女のご家族とは前に一度、挨拶した程度だったが「是非、顔を見てやってくれ」とお父さんに言われお葬式に参加することになった。見て…いいのか…と悩んだが顔を見られるのはこれで最後だと思うと足が勝手に動いていた。顔の周りにはたくさんの花が添えてあった。今まで色んな可愛い姿を見てきたが、今日が1番可愛らしくて美しいと思えた。

「う、ゔぅ…ゆ、柚芽ゆめ…ゔぅ…」情けない声で愛する人を呼びながら泣いた。

どれくらい泣いたのか分からないが、頭が痛くなる程には泣いたのだろう。


「それでは、次に火葬を執り行います。思い出の品などありましたら、是非入れてあげて下さい」と会場にアナウンスが流れる。


「そうだ、これを…これを入れないと…ふふふ。柚芽ゆめ、もう君は僕しか愛せないよ」と僕は丁寧に折り畳まれていた1通の紙をポケットから取り出す。

「そ、それは…!?もしかして!」

「えぇ、そうです!お父さん。婚姻届ですよ!!ふっ…ははは。柚芽ゆめは僕との幸せを願っていた!なので、お父さん。こんな場所ですみませんが娘さんを僕に下さい!!幸せにしますから…ね?」と見開いた目はもう誰の言葉も聞く気はないように思えた。

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