僕は彼女と結婚した。

クロネコ

彼女と

「僕と彼女は、3年前の夏に出会いました。僕たちは、まだ大学生でカフェのアルバイトをしていました。はい、駅前のカフェです…。ふわふわのパンケーキが有名なお店です」

「そうですか。話を続けて下さい」

「はい、そこで初めて彼女に出会い。一目惚れでした。綺麗な人だなと思い、話をしました。彼女も楽しそうに…ぐっぐすっ…すみません。彼女を思い出したら…」

「いいえ、ゆっくりで大丈夫です。自殺された木下きのしたさんのことについて話すのは心苦しいと思いますが…落ち着きましたら、お話下さい」


そう。僕の彼女、木下柚芽ゆめは自分のアパートで自殺したのだ。


ーーー数時間前


蝉の鳴き声しか聞こえない暑い日。

サイレンを鳴らして1台のパトカーがアパートに到着する。

「お巡りさん!こっち!こっち!」と手招きをする女性。

「どちらですか?異臭がするというのは?」

「ここです、205号室。ね?臭いでしょう?」

「そうですねぇ、ここのアパートの管理人さんは?」

「私です!」とさっきまで警察官を案内してた女性が手をあげる。

「鍵を開けてもらえますか?」

「えぇ、開けますよ?」ガチャ…

「ありがとうございます。では、ここからは我々警察が変わりますから。1階でお待ち下さい」

「分かりました」と足速と階段を降りていく。


僕が彼女のアパートに着いた時、管理人さんと隣人の人が何回していたのか分からないひそひそ話をしていた。

「そう、そうなのよ。全然、そんな風には見えなかったじゃない?毎日、挨拶もしてくれて」

「ねぇ〜、そうなのよね。いい子だと思ってたのよ!」

「あ…あら…やだ。彼氏さんよ。可哀想に…」

「気の毒よね、まだ若いのに彼女に先立たれるなんて…」

僕が顔を向けると別に何も話してませんと言いたげな顔でお辞儀してくる。

そんな話より、警察の話を聞きたい。

柚芽ゆめに何があったのか…なぜ死んだのか…僕にはわからない。

どうして…どうしてなんだ?とたくさん考えた。当たり前だ。突然、目の前にいたはずの女性が「自殺しました」と今まで関わりが無かった警察官に言われて平然としている人の方が珍しい。何度もどうして?と考えてもその答えは出てくることはなかった。僕は…僕は…どう生きていくのがいいのか…そもそも生きていて楽しいのか?あぁ、彼女の元に行こうか…。

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