第12話 帰宅

 昼ごはんを食べた俺たちは帰路につく。

 できればもうちょっと遊んでいたかったけど、今日はかなりお金使ったからな。

 これ以上遊んだら俺の財布がピンチになる。


「今日はいろいろあったな」

『そうね。いろいろあったわね』


 本屋でたくさん買い込んで、絶品スイーツを堪能して、服屋で似合う服を選んでもらって、ハンバーグに舌鼓したつづみを打って。

 すごく楽しかった。


「レナは満足か?」

『今日のところはこれで勘弁してあげるわ』

「相変わらず偉そうだな、お前は」


 余韻に浸りながら、一緒に帰り道を歩く。

 いつも騒がしいレナがやけに静かだった。


 そのまましばらく進んだところで、レナが足を止める。


「レナ?」


 俺が目を向ければ──。



『今日はホントにありがとね。楽しかったわよ』



 レナが屈託のない笑みを浮かべながら、真っすぐにお礼を言ってきた。


 ……これがいわゆるデレ期ってやつか。

 初めて見せたレナの純粋な笑顔は破壊力が高くて、思わず心臓が締め付けられたかのような感覚に陥る。


「……そっか。楽しかったのは俺もだよ。こっちこそありがとな」


 照れ隠しに俺もお礼を伝えれば、レナは上機嫌でふわふわと空中を進むのだった。






◇◇◇◇



 来た時と同じように電車に揺られること一時間。

 朝からはしゃぎ続けて疲れたのだろう。

 うたた寝したレナが全然目を覚まさず電車を降り損ねたりとハプニングはあったものの、俺たちは無事に最寄り駅の改札を出ることができた。


 来た時はいろいろと寄り道したが、帰りは一直線に家に向かったのですぐに家に着く。


「ただいま」

『ただいま~』


 手洗いなど諸々を済ませて、ソファーにドカッと腰を下ろしたところで。

 目の前の空中でさっそくラノベ本を読んでいるレナに向かって、俺はふと気になっていたことを尋ねた。


「お前って地縛霊じゃなくなったわけだけど、これからもここにいる感じなのか?」

『そーだけど、何?』

「いや、意外だなって」


 てっきり、いなくなるもんだと思っていた。

 自由な霊になった以上、わざわざ俺と一緒に暮らす必要はないから。


『いなくなるわけないじゃない』


 レナがラノベ本で顔を半分ほど隠しながら、おずおずと口を開いた。


『このアパートは気に入ってるし、それに……もっと海斗の作ってくれるごはん食べたいもん。ハンバーグを作ってもらうって約束もしたんだし』

「……そっか」


 レナはワガママでポンコツで、一緒にいるだけで振り回される。

 それが嫌だったから成仏させようと思ったのだけれど……。


 俺はどういうわけか、レナの言葉を嬉しく思っていた。

 自身の心境の変化には驚くけど──。


 悪くはない。


 そう思った。

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