≪第十四話≫
次の日。
「さあ行くわよ!」とユリ。
「はー。仕方ない…。」
よく考えてみよう作戦、失敗だった。
私は主に、非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そして昨日の夜の会話なんて知らない主はいつものように2匹、外へ出してくれた。
「で?どこに楽園はあるって?」とユリ。
「太陽の方角だよ。」
そうしてその日は連れもいるので昼頃には休むのだった。
翌朝、風の匂いがいつもと違うのに気が付いた。
私は風向きが北から南に変わったことに気が付いた。
しばらくボーっとしているとユリが起きてきた。
「おはよう。何か匂いがいつもと違わないかい?」と私。
「おはよー。うーん。そういえば昨日と違うような…。」
「南…か。朝食の草を食べたらすぐ出発しよう!」
早る気持ちを抑えて朝食を食べた。
3時間ぐらい南へ歩いただろうか。
匂いは強くなるばかり。
どんどんワクワク感が高まり、歩く速度は早くなっていく。
「そんなに急がなくても…。」とユリ。
草を掻き分けたどり着いた場所…海。
そこはどこか懐かしい香りがする見渡す限りの水たまり。
「ここが…憧れのネコの楽園?」
空の青に負けないほどの青い海。
しばらくはボーっとしていた。
「暑いね。涼しそうな水溜りだよ。少し遊ぼう!」とユリ。
「ああ。」
私はおそるおそる海に入る。
冷たくて気持ちいい。
2匹で遊んでいる時、その水がしょっぱいのに気が付いた。
遊び疲れて黄昏の砂浜。
風は僕らを涼しく包み込む。
「…これからどうしよう…。」と私。
「帰ろう。私の家へ!」
ユリは言った。
ユリと一緒に、私が世話になった最後の主の所へ帰る道の中、私は考えていた。
『あれがネコの楽園。ネコなんていなかった…。母親はどうしてそんな事言ったんだろう。』
私は気が付いた。
『…そうか。生きる希望を、夢を持つ事を教えてくれたんだ。』
「ニャハハハ・・・。」不思議と笑いが込み上げてくる。
「壊れたか。」とユリ。
家に着いた。
主はものすごく心配していたみたいで、後の話では捜索願の張り紙を作って近くで張ったりしていたらしい。
その後数日は2匹、家の外へは出してくれなかった。
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