奇襲④
「喰らいなさい!スーパージェントールパ~ンチ!」
そう叫ぶと、その場から弾ける様にジェントールがカルナに襲い掛かる!
疾い!が!ミネア程ではない。カルナの目にはグレイゴリーの動きがはっきり、スローに見える。カルナは感情を失くして以来、稀に異常なまでに感覚が鋭く高まる時がある。それは『五感の開放』とも言うべき状態。今が正にそれだ。
グレイゴリーの拳がゆっくりとカルナの顔面へ向かって飛んで来る。それを左に潜り抜ける様に躱す。そして、グレイゴリーの右脇を通り過ぎ様に身体を切り裂く。刀はグレイゴリーの右脇腹から入り確実に心臓を通り、左肩へと抜け出る!その感触はまるで、自分の手で直接触っているかの様に、刀から伝わってくる。終わった……。カルナはグレイゴリーの死体を背に、刀を鞘に戻す。
しかし、その瞬間!カルナの右脇腹に激痛が走る!そして、間髪を入れず、左半身全てに激痛が走る……!何が起こったのか、カルナは理解できない。意識が遠のく……。辛うじて、分かるのは、自分が地面に倒れている事ぐらいだ。朦朧とする意識の中、信じられない声がカルナの耳に入って来た。
「ククク……。いけませんねぇカルナ君。油断しては」
殺したはずだ……!カルナは心の中で呟く。
「どうですか?私のスーパージェントールパンチの味は?ククク」
俺は奴の攻撃を喰らったのか……?
「それにしても頑丈な壁ですねぇ……。あの勢いでぶつかってもヒビが入るだけですか。余程お金が掛けられている様ですねぇ」
そうか、俺は奴の攻撃で壁まで弾き飛ばされたのか……。
「ククク、まぁカルナ君には聞こえてないでしょがね。あれで死んでなかったら化け物です」
死ぬのか……、俺は……?
「さて、お待たせしました。次はあなたの番ですよ」グレイゴリーが自信満々にウインを指差す。
「お前もフレイと同じく、異能の力を?」
ウインの頬から一筋の汗が、滴り落ちる。その様子を見て、グレイゴリーが満足げに髭を摩りながら、口を開く。
「ん~。いいですねぇ、その表情。さっきの自信は何処へやら。ククク、最高ですねぇ。おっと、質問に答えましょう。この体はフレイ君とは異なり、望んだから手に入ったものではありません。無理矢理、与えられたのです。実験としてね。まぁ今となっては気に入ってますがねぇ~」
「体を与えられた?どういう事だ?いや、それより誰なんだ。その能力を与えたのは?」
「ん~残念ながら、誰にかは言えませんねぇ~。ですが、初めの質問には答えましょう。その為に、あなたの剣を一本貸して頂けませんか?」
「剣を?どうする気だ?」ウインの眉間に、皴が浮かび上がる。
「ん~?ですから、与えられた私の体の秘密を教えて差し上げるのです。な~に、心配せずとも、ちゃんと返しますよ。初めに言いましたが、私は戦闘において武器を使用する事は御在ません」
「良いだろう」
ウインは剣を一本抜き、グレイゴリーに放り投げた。
「ほう。これは、とても素晴らしい剣ですねぇ。ん~?」
「そんな事はどうでも良いだろう?」
「おっと、そうでしたねぇ。では、よく見てて下さい……、ね!」
言うと同時に、グレイゴリーはウインから受け取った剣で自分の左肩を突き刺した。そして、そのまま一気に左腕を切り裂いた……。はずだった。しかし、今のウイン目に映っているのは傷どころか一滴の血すら流れてないグレイゴリーの左腕だった。
「な?何々だ?」ウインは焦りを隠せない。
「ククク、分かりませんでしたか?なら口で説明しましょう。私は異常回復の……、いや復元と言うべきですか。その体を持っているのですよ。まぁ、痛みは感じますがね。ククク」
「ふ、復元……?」
「そうです!それも驚異的スピードでね。先程のカルナ君の一撃、私には見えませんでした。しかし、それ程のスピードで斬られても、そのスピードと同等の速さで復元されていくのです」
「バカな」驚きで、ウインの両目が大きく開く。
「ククク。信じられませんか?ですが、これが現実です。更に付け加えるなら、剣の実力が達人であればある程、剣速が疾ければ疾い程、私は痛みを感じません。ですから、カルナ君もかなりの達人だったと言えるでしょう。心臓を斬られても、全く痛みを感じませんでしたからねぇ。あなたもかなりの達人……、ですよねぇ?ん~?」グレイゴリーがニヤリとイヤらしい笑みを浮かべる。
「それで、勝ったつもりか?」ウインが部屋中に満ち渡る程の殺気を放つ!
「ククク。怖いですねぇ~。ですが、どんなに殺気を放とうと、剣士である、あなたには私は倒せませんよ。おっと、そう言えば借りたままでしたねぇ、あなたの自慢の剣を」グレイゴリーが笑みを零しながら、そう嫌味を言ってウインに剣を投げ返す。
それをウインが受け取る。
「さて始めましょうかねぇ。ん~?」グレイゴリーが構えを取る。
「ああ!殺してやるよ!……、と言いたいが、私が相手をするのは、まだ早いみたいだな」ウインは、剣を鞘に収める。
「ん~?どういう事ですか?あなた以外に誰が私と戦うと言うのですか?」
グレイゴリーの質問に、ウインが黙ったまま顎で方向を示す。
「ん~?なんですと!」グレイゴリーの目に信じられない光景が飛び込んできた。
何とそこには、カルナが平然と立ち上がっていたのだ。
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