来訪④
「クリスティン様~!エイモンド様~!」
「ハワード町長、無事でしたか」
慌てて走ってきた、ハワード町長を見てレナは少し笑みを零してしまった。
「ええ、隠れて見ておりました。ところで、クルリエル様は?」
レナはハワード町長の一言で、冷や汗がドッと涌き出た。シルバーを倒して、気を抜いてウインの事を忘れてしまっていた。
「カ、カルナ!ウインさんは?」
「恐らく、この通りの先だ。モンスターを誘導していったはずだ」
と、カルナが通りの南側を指差した瞬間。南の空が一瞬明るく光る。
「な、何なの?カルナ?」レナの冷や汗が、更に勢いを増した。
「分からない……。行ってみよう」
「ええ」
レナとカルナが行こうとするのをハワード町長が引き止める。
「ちょちょちょ、クリスティン様、エイモンド様!わ、私は?」
「え?どうしよう、カルナ?」
そんな事、今のレナに考える余裕など無かった。思わずカルナに任してしまう
「モンスターの死体を燃やしておいてくれ……」
「死体を?はい、分かりました」
ハワード町長の返事を聞くと同時にレナとカルナは走り出す。
「死体、燃やすの?」走りながらレナは、カルナに疑問をぶつけた。
「ああ、また動き出すかもしれないからな……」
「そっか」
と、レナは今の会話と全く関係の無い事に気付いた。ハワード町長のレナ達の呼び方が『さん』から『様』に変わっていた。そして、ジャン団長の話を思い出し、心の中で苦笑してしまった。
しばらく走り、二人は町の南出口の方から歩いてくる人影を発見する。ウインだ。向こうもこっちに気付き手を上げた。
「ウインさん、良かった。無事で」レナはホッと胸を撫で下ろす。
「ああ。そっちも片付いた様だね」ウインは髪を掻きあげながら、笑みを返した。
「ええ。それより、ウインさん。さっきのは一体何だったの?急にこっちが明るくなったけど」
「ん?ああ、あれね。ゴールデンがフレイの結界に突っ込んだのさ。だから、跡形も無くなったよ」
「ああ、それで」レナは納得した。
「うん。それと、シルバーの死体も処分した方がいいね」
ウインがカルナと同じ事を口にしたので、レナは少し感心した。
「それなら、今ハワード町長が燃やす準備をしているわ」レナはニコリと笑みを浮かべた。
「へぇ~。手回しがいいじゃないか。レナ君」ウインが感心して、大げさに両手を広げて、そう言った。
「うん。でも実は、カルナが言ったんだけどね」少し照れくさそうに言った後、そのままカルナに視線を送る。
それにつられて、ウインもカルナに視線を送り、笑みを浮かべ口を開く。
「流石だねぇ、カルナ君」
「ああ。ついでに、ゴールデンの首をまだ持っているなら、処分したらどうだ?」カルナは褒められた事などどうでも良さそうに、ウインにそう提案した。
すると、ウインは一度溜息を付いて、カルナに言葉を返す。
「その心配なら要らないよ。昨日燃やしたからね」
「き、昨日に?どうして?」
驚いてレナは二人の会話に割って入った。何故なら、昨日ウインと会った時、レナ達がシルバーの首を置いてきた事を「もったいない」と言っていたからだ。
「それは、レナ君と同じ事をしたからだよ」
「私と?どういう事?」レナは目を丸めた。
「私もフレイの結界なんて信じられなかったのさ。かと言って、自分の身で試す気になんてなれなかった」
「あ、まさか!それで、ゴールデンの首を放り込んだの?」
「ああ。そのまさかだよ。見事に燃えて灰になったよ。本当に泣きたい位後悔したよ」
「フフフッ」ウインが本当に泣きそうな顔をしたから、レナは笑ってしまった。
「レナ君。笑い事じゃないよ、全く……」ウインは一際大きく、溜息を付いた。
「ごめんなさい」
その会話の後、レナはふと思った。首がすでにこの世に無くなっていたから、金の斧を持った方は首無しで現れた?とすると、やはりアックス兄弟が生き返った?
と、ここまで考えて、カルナの“真実を知りたければ、自分の目で確かめるしかない”と言う言葉が脳裏を過ぎり、レナは考えるのを止めた。
「それじゃあ、そろそろ戻ろうか?レナ君、カルナ君」ウインが頭を掻きつつそう言った
「ええ」「ああ」二人が同時に返事をする。
そして、三人が歩き出すと同時に、前方の空が明るく染まった……。
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