結界②
太陽の光に二人は思わず目を細める。
「思った以上に、日が高いな」
「ええ、正午ぐらいかしら?」
二人が外に出ると、闇の森とは対照的に明るく、見晴らしの良い大地が広がっていた。そして、洞窟から真直ぐ北に向かって道が伸びている。
「急いだ方が良さそうだ。道の先に煙が見える」カルナが道の前方を指差す。
「本当だわ!まさか今、襲われている?間に合える?」
「わからない。あそこまで、走れるか?」
「ええ!走るわ!」
二人は同時に走り出す。そして、少し走ると微かに町の影が見える。
「思ったより遠くないわ、ペースを上げましょう!カルナ」
「ああ」
二人はスピードを上げ加速する。すると、見る見る町が大きく見え始める。
「あ、赤くない?」レナが思わず、そう零す。
「ああ」
「ほ、本当に赤くないよね?赤くないよね!カルナ」
「ああ、どうやら、間に合ったみたいだ……」
嬉しい!レナはカルナの言葉を聞いて胸が詰まりそうになった。初めは自分の目を疑った。だけど、カルナの言葉で見間違いじゃないと確信出来た。ついに追い付いた!思わず涙が零れそうになる。しかし、まだ赤髪の男を止めた訳じゃない。そう思い涙を止め、レナは気を引き締める。
「ここで、絶対止めてみせる」
ボソリと零し、レナは更に走るスピードを上げる。それを見てカルナもスピードを上げる。すると、町がはっきりと見え始める。その町は、今二人が走っている道が、そのまま町を左右に二分する大通りになっている。その道を挟むように、大小幾つもの建物が並んでいる。そして、その内の右側の一軒が炎に包まれ、煙を上げている。
「あれね!」レナが町に入ると同時に煙の正体を見つける。
「ああ、人だかりが出来ている。誰か争っているようだ」
「カルナ、見えるの?」
レナにも見えるには見えるが、はっきりとは分からない。
「ああ、何とかな、二人の人間が争っている。一人は白い髪。どうやら剣士の様だ」
「もう一人は?」
「剣士の影でよく見えない」
「そう……」
「いや、体勢が変わった。もう一人は……、赤い髪をしている」
「え!?」
レナの心臓がひとつ大きな鼓動を打つ。
「だが、長髪ではない」
「みたいね。どっちにしろ二人を止めるわ」
カルナが言葉を付け加えた時には、すでにレナにも見えていた。そして、レナは走りながら両手を胸の前にして、呪文を唱える。すると、青白い光を放った、光球が現れる。それを弾く様に両手を前に突き出す。放たれた光の球は一直線に、争う二人に目掛け猛スピードで飛んでいく!それに気付き二人が弾かれるように左右に飛び退く。そして二人同時に、球の飛んで来た方に振り向く。それと同時にレナとカルナがその場に到着した。そこでレナとカルナはその二人を確認する。
炎を背に立っている男は、少し長めの真っ白い髪を後ろに流している。両手には、少し短めの曲線を描いた一対の剣を持っている。柄の部分には羽根の装飾が成されている。
もう一人の男は、何の武器も持っておらず、両手に鉄製の篭手を嵌めている。これで剣を捌いていたのだろう。髪は短めで全て立たせてある。その色は真っ赤だ。
「何だ?貴様ら?」赤い短髪の男が、レナとカルナに問い掛けてきた。
それを無視してカルナが口を開く。
「こいつか?レナ」
「ち、違うわ……」
レナ自身、赤髪の男の顔は知らない。しかし、目の前の男は違う気がした。
「何、無視してやがる!貴様らも焼き殺されたいのか?」
そう言うと、その男の手から炎が浮かび上がる。それを見てレナは確信した。やっぱり違う。赤髪の男は恐らく炎など使わない。
「君達、下がっていたまえ」
白い髪の剣士が叫び、炎使いの男に斬りかかる。
疾い!白い髪の剣士は一瞬で間合いを詰め、二本の剣で左右から挟むように斬り付ける!すると、通り一帯に金属のぶつかる鈍い音が響く。炎使いの男が左右それぞれの篭手で白い髪の剣士の攻撃を受け止めたのだ。そして、炎使いの男がその体勢から蹴りを放つ。白い髪の剣士は鋭く反応し、後ろに飛んで躱す。
「ちっ!今日は、ほとほと邪魔の入る日だな。まぁいい。今日の目的は果たしたからなぁ」
すると、炎使いの男は何と、後ろの二階建ての家の屋根まで一気に飛び上がった。
「逃げるのか!」
白い髪の剣士が叫ぶ。
「ああ。流石に剣士二人に、魔法まで使える奴が居ては分が悪いからなぁ。じゃあな」
そう言うと同時に、炎使いの男は炎の球を三人に向かって連続で打ち込んできた。咄嗟に躱して、三人が同時に見上げた時には、すでに炎使いの男の姿は無かった。
男がいなくなったのと同時に、遠巻きに見ていた人達が集まって来て消火活動を始め出した。その中で、燃えた家の持ち主だろうか、二人の男だけは地面に座り込んでいた。
「君達は?」
いつの間にか、白い髪の剣士がレナ達のすぐ側まで来ていた。
「え?あ、わ、私はレナ=クリスティン、彼はカルナ=エイモンドよ。あなたは?」レナは、慌てて対応する。
「私の名はウイン=クルリエル」
「あ、あなたが?」レナは思わずそう口にしたが、頭の中では“やっぱり”と零していた。
「おお。私の事をご存知でしたか。あなたの様な美しい方に知られているとは光栄だ」
「え?」レナは予想外の言葉に少し動揺してしまった。しかし、すぐに気を取り直す。
「そ、そんな事より、一体何事なの、これは?」
「これは失礼。その説明はあそこの二人が動けるようになるのを待ってから、二人に聞いた方が良い。」
そう言って、ウインが目をやった先には、さっきの二人が居る。一人は恰幅の良い老人で、もう一人は細身で長身の三十代前半位の男だ。
「誰なの?」レナがウインに質問する。
「ああ、この町の町長とその息子だよ」
「町長親子?じゃあ燃えているのは、町長の家?」
「いや、違うよ。あの家は、さっきの男との戦闘の飛ばっちりを受けただけの、元服屋だよ」
「それじゃあ、何故あの二人はあそこまで落ち込んでいるの?いえ、それよりさっきの男は何者なの?」
レナが捲くし立てるように質問したが、ウインはあっさりと受け流す。
「その質問も、町長から聞いた方が良いだろう。私も昨夜来たばかりなんでね」
「わかったわ。じゃあ、別の質問は良い?」
「ああ、いいよ。何だい?」
「風蜥蜴を倒したのは、あなた?」
「ああ、そうだよ。おかげで楽に来られたんじゃないかい?」
「そうでもなかったわ」
「ああ、まさかシルバーに出会った?奴は洞窟には居なかった」
「ええ、でもカルナが倒してくれたわ」
「シルバーを?凄いねぇ。へぇ。君も賞金稼ぎかい?」
ウインが感心したといわんばかりにカルナに話し掛けてくる。
「いや、そういうのではない」カルナはそれだけ答えて、ウインから視線をそらした。
「ふ~ん。じゃあ、首は置いてきたのかい?勿体無い」
カルナが答える気配が無いので、レナが答える。
「私達はそれが目的じゃないの。じゃあ、さっきの男も賞金首なの?」
「いや、違うよ。あの男を倒さなきゃこの町から出られないんだ。君達も町に入った段階でもう、巻き込まれてしまっているんだよ」
「それって、どういう意味?」レナが怪訝な表情を浮かべる。
「それも、町長から聞いてくれ。今度はこっちの質問。君達は何故この町へ?」
「え?ああ、実は……」と、レナが理由を話そうとした時、別の声が話を遮る。
「クルリエル様」
その声に二人が同時に振り返ると、いつの間にか、町長とその息子がやって来ていた。
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