第33話 ハルの力の推測

 魔石を拾い、ルビーの鉱石を壁から掘り出し、俺達は検証を行う事にした。

 ハルが「危ない気がする」「安全だと思う」というのを当たっているかどうか確認し、傘でバリアが張れているかどうかを確認する。それはどの方向からの攻撃を防ぐのか。どのくらいの時間もつのか。

 どのくらいの力を防ぐのかは、残念ながら上限がわからなかった。ウサギやイノシシ、イヌとその辺の魔物をぶつけてみたが大丈夫で、俺達が交代で攻撃を加えてみても大丈夫だった。

 とことん試すのなら、もっと強い魔物の出ることろにいくしかない。

 そこでこの検証は一旦終了とした。

「やっぱりオレンジ姫関係なのねえ、ハルはあ」

「ところで、それは何だ?小さい傘だなあ」

 ハルは嬉しそうに笑った。

「コンサートの時に、振るんだよ。

 いやあ、持ってきて良かったなあ。何となく胸ポケットに差して来たんだよね」

 それに俺達は真剣に言い合った。

「ほかにニジプリ関係のグッズとかないの?コンサートの持ち物で」

「コンサートに持って行くファンの7つ道具は、法被、タオル、ハチマキ、ペンライト、傘、財布、メガホンだよ」

 ハルが言うのを想像してみた。

「財布って何?」

「グッズを買うんだよ。やだなあ」

 俺達はなるほどと頷いた。

「法被も何かあるかもしれないな」

 だが、ハルはキッと目を吊り上げた。

「やだよ。血が飛んだらどうするんだよ。タオルとハチマキも持ち込まないからね」

「メガホンも邪魔よねえ」

 そこで、オレンジ姫助けてシリーズはここで終了となるようだ。

「まあ、媒体はオレンジ姫関連だとしても、その内容だ。

 ハルは、慎重だからかな。気配を読んで魔物の位置や数を大体わかるみたいだな。それと、バリア。霊関係を浄化する力は、死者に対して、忌避する感覚が強いのかもな」

 そう推測した。

「そうなると、もしかしたら、回復とかそういうものもできるかもしれないぞ」

 そう言うと、ハルは笑った。

「回復はどうかなあ」

「やってみるか?ちょっと切ってみるから」

「やめなさい。本当にシュウは、研究者ってみんなそんなやつばっかりなの?全員バカなの?」

 イオが嘆息し、チサが楽し気に笑う。

 そうしながら、ハルの勘を確認して歩いていた。

 が、ハルが足を止めて怪訝な顔付きになる。

「あれ?おかしいなあ。何か、この壁の向こう、何かいそうなんだけど……」

 ハルは何も無い壁を困惑気味に見上げた。

 俺達も見る。

「もしかして、隠し部屋とかいうやつじゃないのお?」

 面白そうな予感がする。

 俺達は、どこかにそれを開けるスイッチはないかと探し始めた。

「ないわね」

「こういうのって、叩いたら開いたりしてねえ」

 チサが笑って壁をガンガンと叩いた。しかしびくともしない。

「火とか風とか土とか……土か」

 俺はその壁に向かい、砂になるようにと、分子構造を切るイメージを送った。

 途端に壁はザアアッと音を立てて崩れ、土ぼこりが舞い上がる。

 咳込んで土ぼこりが収まるのを待ってみると、小部屋があった。

「あったわ」

「しかも、見てえ。壁に凄い量の鉱石があるわよお」

 イオとチサが言うのに、俺は嘆息して言った。

「お前ら、現実を見ろよ。その前に、もっと目立つものがあるだろ」

 ハルが叫ぶ。

「ヤマタノオロチ!?もうだめだ!!僕達、ここで死ぬんだよおおお!!」

 流石出雲ダンジョンとでもいうべきか。その隠し部屋の真ん中には、頭が8つもある古事記で有名なヤマタノオロチが居座っていたのだった。





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