第31話 出雲ダンジョン

 翌日は、出雲ダンジョンへ潜った。そのためにわざわざ大荷物を持って来たのだ。

 初めての所なので、いつもよりも新鮮な気持ちだ。

「今日はカートがないから、丸ごとの持ち帰りはなしでいこうな」

 それに、イオもチサもハルも頷いたが、イオとチサは、

「宝石と魔石だけでいいくらいだわ」

と言い、

「捕らぬ狸の皮算用にならないといいけど」

とハルが心配そうに呟いたら、睨んでいた。

 それで俺達は、とにかく行こうと中に入った。

「ウサギだわ。かわいいわねえ」

 うずくまっていても成人の膝より高いくらいの背丈のあるウサギがこちらを睨んでいた。頭に角があり、額に赤い点がある。

「目付きが悪くないか?」

 俺はウサギの凶悪そうな目付きに「かわいい」という印象は消し飛んでいた。

「それにやたらとデカイよね」

 ハルもビビっている口調で言う。

「フフフ。あの額の赤いのが魔石ですってえ。急所は、魔石か、耳の付け根か首らしいわよお」

「よし。耳の付け根か首でいこう」

 言った時、ウサギの方から飛び掛かって来た。

 早い。驚異のジャンプ力で、あ、と思った瞬間に目の前に瞬間移動したかのような速さだ。

「ギャッ!?」

 槍をほぼ反射で突き出し、耳の付け根を上手くえぐった。

 反対側では、イオが耳の付け根に槍の穂先を差し込んでいた。

「次が来たよ!」

 上ずった声で言いながら、ハルがスコップを振り回すと、それがウサギの顔面にヒットし、地面にボトリと落ちたところをハルが再度スコップを打ち下ろし、首に刺す。

 もう1羽は、チサが牛刀で刺した。

 危なげなくウサギはやれるようだ。

「ウサギさん、ごめんなさいねえ」

 チサもイオも、かわいいと言いながら容赦も躊躇もない。

 そっちの意味でも安心して、俺達は魔石を拾って歩き出した。

「鉱石を見付けたいわね」

「採掘ってのも、ロマンだよなあ」

「坑道が崩れたりってしないのかな。大丈夫かな」

「ハルは心配性ねえ」

 俺達は警戒しながらも、壁にそれらしいものがないか目を凝らして進んだ。

 「昨日の体験教室の時、魔力を使いながらやってみたらどうかと試したんだけど、ダンジョンの外では一切魔術はおろか魔力の放出すらできなかったよ。だから、帰ったら、地下室でちょっと色々と試してみたいんだよなあ」

 俺はそんな事を言いながら歩いていたが、皆が食いついて来た。

「小説ではおなじみだよね。魔力を練り込んで錬金するとか、抽出するとか。それで純度が上がったり、切れ味が良くなったりするんだよ」

「やってみようよ、面白そうだわ!」

「何か凄いものができたりしてねえ」

「是非鉱石を持ち帰ってやってみよう」

と言えば、

「そうだね。よし。鉱石を探そう!」

と全員が超やる気になった。

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