第10話 準備はしっかりと
地下室ダンジョンを調査するにあたって、色々と話し合った。
まず問題となったのは、武器だ。流石にこの前のように、素手やカバンや折り畳み傘や缶ビール入りの買い物袋というわけにはいかない。
かと言って、何がいいのかと言われると困る。
俺は仕事でダンジョンからの産出物を扱っていた都合上、色々と情報が入っていたので、それを共有しておく事にした。
「1階程度ならそれこそこん棒でも有効らしいけど、2階からはそういうわけにもいかないようだな。米軍によると、銃も効かないらしい。それでロケットランチャーを使ったら、壁や天井を崩して生き埋めにするなら有効でも、それすら跳ね返すようなやつも出るらしいしな。結局、刀剣類や、丈夫な鈍器で殴るっていうのがいいらしいぞ。
あと、さっきの豚を倒しまくってたら、いっぱい溜まったよ。なんかもう、ありがたみがなくなりかけてるんだけど」
言いながら、俺はダンボール箱を開けた。ゴロゴロと魔石が入っており、魔石ひとつひとつは小さいが、これだけあるとそこそこ重い。
「この前は実感が無かったけど、これって凄く高い値がついてるんだよね?」
ハルがビクビクしながら言う。
「ああ。これだけゴロゴロしてたら小石みたいで実感が無いけど、数千万になるだろうな」
俺は魔石を見ながら言った。
「すっ!?」
3人は箱をを睨みつけるようにしながら素っ頓狂な声をあげたが、チサが、
「これくらいの金額を、横領して貢いだわけねえ」
と低い声で呟いたので我に返った。
「ええ、そうね。まあ、こうして空き箱にゴロゴロ入ってるとそうは見えないわね。何だったら庭に転がしておいても違和感がなさそうというか」
イオが言って、ハルは高速で首を縦に振った。
「ないけど、ダメだよ。金庫に入れておいた方がいいくらいだよ」
「まあな。とは言え、暇潰しにあの豚を殺ってると作業みたいにこれが溜まって行くんだよなあ」
俺はダンボール箱を下に置いた。
「しかし不思議だ。何で魔物を倒したらこれが出るんだ?魔物の体内にある内臓の一部、もしくは胆石とか尿道結石みたいなものが魔石という可能性があるから、魔石が生成される事そのものはあるかもしれない。
でも、なんで遺体が消えてこれだけが残るんだろうな。
もっと進めばポーションとか武器とかも出るんだろ?もっと原理がわからない」
俺はブツブツとそう言ったが、嫌そうな顔をする皆に気付いた。
「ん?どうした?」
イオが、顔をしかめて文句を言う。
「内臓とか尿管結石とかだったら、何か嫌。素手で触りたくないというか」
「気にするな。
で、武器だけど。どうする。日本では一般人があんまり武器を買う事ってないからなあ。店も値段もわからん。刀とかって、店にあっても美術品だろ、実用向きじゃなく」
「まあ、そうね。それにいきなり扱った事も無い素人が刀なんて振り回しても使えないわよ。まあ、鈍器が確実かもね」
イオのアドバイスで、各々武器を見繕っておく事になった。
そして、次の水曜日がイオもハルも仕事が休みだからと、水曜日にまた集まる事にした。
俺は相変わらず床下収納庫のフタを開けたり閉めたりと暇つぶしで豚を退治し続けてながら、色々と考えていた。
物干し竿は長すぎるが、意外と槍というのはいいかも知れない。パイプか何か、手頃な長さの丈夫な棒をホームセンターに探しに行こう。
そんな事を考えながらも、俺は再び床下収納庫のフタを開け、新たに出現していた豚に流れるように火炎放射を吹き付け、退治していた。
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