第9話 ようやくの二次会
肉の弾力がいいし、旨味が濃い。
「美味しいわあ。家で昨日は生姜焼きにしたんだけど、これもいいわあ」
俺達はトリスキを食べていた。
「チサの所は生姜焼きにしたのか。それも美味しそうだな。俺はあっさりと塩と胡椒で焼いてみたけど、凄く良かったぞ」
俺が言うと、3人はうっとりとした声をあげた。
「そういうシンプルな料理って、素材の良さがわかるわよねえ」
「いいなあ。私は唐揚げにしたわ。唐揚げも物凄く美味しかった!」
イオがそう、思い出すようにして言うと、ハルも、
「僕は親子丼にしたんだ。何か、昔食べた高い地鶏みたいに美味しかったよ」
と言い、全員でうっとりとそれらを想像した。
「ヤバイ。もっと色々食べたくなってきた」
イオが涎を啜りながら言い、ビールをグイッと空ける。
「また獲りに行きたいわねえ。シュウ、いいかしら」
「でも今は一応危ないからって立入禁止になってるよね、あの穴」
ハルがチサにそう言う。
そこで俺は、グラスを空けるとニヤリと笑った。
「見せたいものがあるんだ」
そして、おもむろにキッチンに全員を連れて行き、閉じていた床下収納庫のふたを開けた。
「うわあ!」
ハルが飛び上がるが、俺は余裕を持って、火炎放射で豚を退治した。
「床下収納庫、我が家の地下室になったらしいんだよな」
イオとハルは呆然とし、チサは嬉しそうに万歳した。
縄梯子で下に下り、魔石を拾う。
「床下収納庫を開け閉めする事で、ここの豚は出て来る事がわかってる。
それとこの部屋は昨日最後に来た部屋だったよ」
3人共、物珍しそうに辺りを眺め、階段の下を覗き込んでいる。
「どうする?進む?」
俺が訊くと、3人は各々考えて口を開いた。
「私は、やりたいわ。美味しいものを獲れるなら、なおいいわねえ」
チサはおっとりと笑う。
「私も、やりたいわね。いい鍛錬にもなるし、ストレス解消に持って来いだもの」
イオは楽しそうにウキウキとして言う。
「僕も、やりたいかな。食費が少しでも浮いたら助かるし、魔石が売れたらもっと助かるよ」
ハルはしっかりと皆の目を見ながら答えた。
「シュウはどうなの?真相を説明してどこかに就職して、休日だけ潜るとか?」
イオに訊かれ、俺は答える。
「少なくとも今はどこにも勤める気はない。クビの事情を説明してまわるのも馬鹿らしいし、悔しいけど信用するのは俺よりも向こうの言い分だろうからな。そうなると、少なくとも日本で研究職に就くのは難しいし、海外も会社のつながりがあればどうだか。
だから俺はダンジョンに潜る。魔石も魔物もダンジョンそのものも、知りたい事だらけだし、家の下にあるなんて幸運、利用しない手はないからな!」
「そうと決まれば、武器について考え直さないとね」
イオが言うのに、皆頷いた。
確かに。素手カバンや折り畳み傘、ビール缶入りのビニール袋なんてものじゃ、ダメに決まっている。
「よし。一旦戻って作戦会議だ」
俺達は縄梯子を上っていった。
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