9. 離島での思い出

 2日目の朝。やっぱり少し寂しい気持ちで、Aくんとは別れてゲストハウスに帰り、準備をして、何事もなかったように、フェリー乗り場へ向かった。

 今日は、昨日行った居酒屋の人たちと離島に行く。昨日誘ってくれた店長と、4個下の男の子と、3個上の女の子だ。男性メンバーは2人ともかっこいいし、女の子も可愛かった。みんな生い立ちも年齢もばらばらで、特に私は飛び入り参加なわけだが、壁を感じない人達だったのですぐ打ち解けることができた。


 4人で過ごした離島は、とても楽しかった。本当に気の合う人達でびっくりするほど心から解放的な時間を過ごすことができた。



 そんな中でも私は、Aくんのことが頭から離れなかった。「明日行こ!」という連絡がAくんから入った時は、嬉しさと同時に、こんなに上手く行くことがあるのかという恐怖すら覚えた。とにかく明日彼に会える。そのことがとても楽しみになった。Aくんは重ねて、「車借りたから後で合流しよ!」と誘ってくれたが、その夜は離島のメンバーで飲みに行くことになっていた。正直どちらも捨てがたいなんて思ってしまったが、ここは離島のメンバーとの飲み会を楽しもうと決めた。


 その飲み会はとても楽しかった。私は久しぶりに一部の記憶があいまいになった。飲み会を終えて帰路につく際に、3人はみんな自転車を持っており、私は店長と楽しく2人乗りをした。

 3人と解散した後、すっかり夜も更けていたが、私はやはりAくんのことが頭から離れなかった。酔っていたこともあり、Aくんに電話をかけると、寝ていただろうにも関わらず、彼は出てくれた。正直話した内容は覚えていないが、その時かけた1本の電話が私の彼への気持ちを物語っているような気がした。その夜は、Aくんと合流することが出来なかったので、今日はゲストハウスに帰ろうと思っていたところ、店長から何回も電話が入っていたことに気がついた。「一緒に帰ろー」というメッセージも来ており、少しためらったが、電話をかけ直した。そこでの会話の内容もあいまいだが、結果として、店長と再会し、自転車を2人乗りして店長の家に行っていた。店長とは何も無かったが、今日もゲストハウスに帰らなかったなと思った。

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