6. 運命的な出会い

 満腹感と明日のプランができた嬉しさに、うきうきしながら居酒屋を後にした。そのままゲストハウスに帰って寝るのはまだ早いし、せっかく来たのでなんだか勿体無さを感じ、少し散策することにした。


 私は、旅中で一度はバーに行きたいなと思っていたので、どんなバーがあるか歩きながら見てみようと思い足を進めた。10月なのに、肌に触れる温度が暖かいことが、歩いているだけでも凄く気持ちよかった。南の島の空気を思う存分感じながら、街灯の少ない暗い道を歩いていた。するとたまたまシーシャの看板を見つけた。シーシャも旅中でで行きたいと思っていた場所の一つだった。しかし、入り口が分かりづらく、どうやって入るのかとうろうろ看板の近くを見ていた。


「何か探してるんですか?」


急に話しかけられた。声のした方へ目をやると、キャップを後ろ被りにして、長袖長ズボンという、半袖ショートパンツの私と、正反対の格好の男性が立っていた。ぴったりした服から分かる、鍛えられて引き締まった身体のシルエットも、はっきりとした目元の濃い顔立ちもまさに私のタイプだと瞬時に感じた。


「シーシャどうやって入るのかなと思って...」


どきどきしながらそう答えると、一緒にシーシャの入口を探してくれた。

 すると、


「一緒に飲みませんか?」


と、この旅2回目のお誘い。


 しかし、見た目は私のタイプではあっても、正直彼(以下Aくんと呼ぶ)を怪しいと思う気持ちの方が大きかった。明日離島に行く約束もある。


「1時間くらいなら...」


と控えめに誘いにのった。彼には深く関わらず、こちらからは彼に興味があるとは感じさせないようにしようと決めた。

 彼はこの居酒屋で一人で飲む予定だったが、一人で飲むのが本当は嫌だったらしい。そんなタイミングで私が現れたというわけだ。そもそも、嫌なのに一人で飲む予定だった、というのも怪しく思えたが、私はお酒自体は好きなので、1時間くらいだけ、彼との時間として飲もうと思った。

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