5. 突然の誘い

 どこで食べようかな。早く決めなくてはいけない。もうすぐ20時になってしまう。ただ、お腹がすごく空いて耐えられなかったため、ゲストハウスからちょっと出たところで紅芋シェイクを買って、歩きながらお店を探すことにした。とても美味しくて、お腹と気持ちが満たされた。

 お酒の飲めるところが良いと思っていたが、私は実は居酒屋が苦手である。ワインがあるようなお店が好きで、大衆居酒屋のような雰囲気は居心地が悪く感じる。そのため、落ち着いた雰囲気で、島の料理が食べられるお店を探した。15分くらい歩きまわり、お洒落な感じの新そうな居酒屋さんを見つけた。


 どきどきしながら入ってみると、月曜日だったからかコロナ禍だからかそんなに混んでおらず、私は空いているカウンター席に案内された。なんとなく、男性客の視線を感じて、少し居心地が悪かった。でも、島がよく似合うかっこいい人が多かった。


 私が頼んだのは、島の名物何品かと泡盛のロック。気さくな女の子の店員さんがおすすめしてくれた泡盛にした。

 料理はとにかく美味しかった。レシピにこだわりや手間暇を感じる味だった。泡盛には、なんだかいつもよりお酒を感じた。その時は泡盛が高い度数を持つことを知らなかったので、朝早起きだったから疲れてるのかななんて思っていた。ひとりでこういった居酒屋に来て食べることが初めてで、緊張していたのか予想以上にお腹いっぱいになった。



 私はひとり旅をする中で、心の奥底では誰かと出会わないかなと思っていた。ひとり旅の醍醐味は、旅先での出会いだと思っていた。ひとりなら、気が合う人と出会った時に気兼ねなくその人と一緒に行動できる。そんなことを考えながら、お会計をすることにした。



「ひとり旅ですか?」


泡盛をおすすめしてくれた可愛い定員さんが話しかけてくれた。基本喋り相手がいないので、つい多く喋ってしまう。せっかくだから、島でのおすすめの場所を何個か聞いた。そうしていると、中から高身長の男性が出てきた。マスクをしているけれど、整った顔をしているのが分かった。

「明日、離島に行くんだけど一緒に来ますか?」

突然の誘いに驚いた。旅先での出会いに期待しながらも、この時ばかりは完全に気を抜いてメイクすらしていない。そんな初対面の私を誘ってくれるとは。しかも少し私のタイプだった。


「いいんですか?」


と私が聞くと、


「全然いいよー!」


と言ってくれた。


 そうして、翌日、店長と居酒屋で働いている男の子と女の子の3人と共に離島へ行くことが決まった。離島にもどこかのタイミングで行きたいなと思いつつも、ノープランだった私は、突然の誘いになんだかラッキーな気分になった。

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