第21話 アーネスト、帰国

 アーネストが母国に帰国することが国の決定となったのは、それから一か月後のことだった。しかし、アーネストはもうすでに国はおらず、母国に帰ってしまった。

 オーフィリア国にいる意味はないといい捨て、男娼数名を連れて母国の別邸で引きこもり生活をしていると聞いた。

 少々心配な面もあるが、ゼストは責任をもって、アーネストの相手を見つけるといった。

 しかし、ゼストが見つける相手となると、それはそれで心配だ。

 それに、アーネストはゼストを好きだったのだから。

 しばらくは、傷心の身でいるのが良い薬だと思う。

 あの日以来、ゼストと子づくりに熱心になってしまい、体が軋むのだ。

 毎晩抱いていたいというゼストの言い分に、セイが言ったことはこうだった。

『むやみやたらに抱いても無意味です。国が傾く前に、整理すべきこともあるでしょう』と。

 するとなぜか、ゼストは一週間に一度だけしか抱かなくなったのだ。

 不思議だと思いつつ、アーネストは王妃の務めを全うしなくてはいけないのだから、文句を言っている暇もない。

 その日は、国内にある病院に慰問に行くことになっていて、ルドルフとナン、それから護衛を連れて出かけなくては行けなかった。

 負傷した兵もいるし、大切な仕事だ。

 今までゼストが好き勝手したせいで、こういう大事な仕事がほったらかしにされていたことを、ゴシップ記事は問題視し始めた。

 ゼスト王に問題はないのか? と。

 もちろん、こんなことで王家は揺るがないが、相変わらずあることないことを書き綴っている。

 アンジュは白のデイドレスに身を包むと、すぐに馬車に乗り込んで慰問先の病院に向かった。

 ナンは心配そうに馬車の中でアンジュの顔を除いてくる。

「お体の調子は?」

「平気よ?」

「何かありましたら、すぐに言ってくださいませ!」

「ありがとう。心配しすぎよ、ナン」

「ですが、懐妊の兆候を見逃すなと医者に言われておりますので」

「そう……。なんだか大変ね」

 分かっていても、子孫を残すことの重みを痛感する。

 馬車に揺られていると、大きな病院が見えてきた。

 扉の前で止まると、ルドルフとナン、そしてアンジュが中に入る。

 薬の匂いがして思わず鼻をひくつかせてしまう。

 ルドルフが前に立って病院内に入ると、細見で白髪の院長が迎えてくれた。

「ありがとうございます。今日は華やかな日ですね」

 お世辞でもうれしいと、アンジュはにこやかにほほ笑んだ。

「前妻のアーネスト様も慰問にいらっしゃっているんです。綺麗な方がふたりもいると、本当に雰囲気が変わります」

「アーネストさまっ⁉」

 ナンが自分の代わりに驚きの声をあげた。

 無理もないのだが、彼女はもうオーフィリア国には興味がないと言っていたし、この国に入るにも手続きが必要なのだ。

 王が知らないまま入国出来るわけがーー。

(いえ。彼女の母国は魔法の国。本気を出したらなんでもありだわ)

 外交上、規約を守ってくれるが、アーネストがオーフィリア国に対して真面目に従うとは思えない。

「アーネスト様はどこにいるんですか?」

「今、集団部屋のところで言葉を掛けてくださっています」

「そう。私も行くわ」

 ナンが目の前で目を丸くした。

 ルドルフも驚いた顔をする。

「挨拶もなしに、逃げるように退散するわけにはいかないわ。王妃だもの」

 アンジュは胸を張った。

 アーネストの不法入国のことといい、それなりにきちんと対応しないといけないからだ。

 集団部屋に案内されると、そこにはふわふわな金髪を卸して、青いドレスをまとった小柄な美女がいた。

(怖気づいたらダメよ。もう戦いは終わり)

 アンジュは言い聞かせて、アーネストのそばに寄る。

「アーネスト様?」

 声をかけると、アーネストは一瞬驚いた顔を見せつつ、アンジュのほうを向いた。

「こんにちは、アンジュ」

「勝手に国に入られては困ります」

「勝手ではないわ。オーフィリア国の外交官には伝えたもの」

「……っ」

「あなたが知らないだけよ? ゼストは知っているんじゃない?」

 いけしゃあしゃあと言われて、アンジュは黙りこんだ。

 政治に対しては口を挟んでおらず、ましてや宮中の臣下のものは身の回りの者とゼストに近しい人間しか知らない。

 彼女のように、城の人間を買収する必要もないせいか、その点では全く疎かった。

「ゼストが知っていればいいのです。いきなりいるものですから」

「ところで。最近子づくり頑張っているそうじゃないの?」

「な、なんでそのことを……?」

 アンジュは顔をひきつらせた。

 このことは城の中でも口にできるのは僅かなものだけで、皆、アンジュを気遣って口にしなかった。

 こんな風に公衆の面前で言われるとは思わず、顔を真っ赤にする。

「私の悪い癖があってね? のぞき見が趣味なの」

「のぞき見……。ま、まさか……」

「魔法って便利だけど、モラルがない人間が使うととんでもないことになるのよ? うふふ」

 アンジュは卒倒しそうになる。

 一週間に一度だけ抱き合うことになっても、それは濃密なものであり、卑猥だ。

 最近だと、ゼストが湯舟の中で抱きたいと言い出して、のぼせるまでつながっていた。

 水滴が体につくと、それをすべて舐めとられて、体中を舐められたのだ。

「思い出すだけでも体が火照る? 愛されてるじゃない?」

「アーネストさまっ。もうその辺で。慰問に来ているのです」

「でも、私が負けたままって不服だもの。あなたの口から弱音を少しでも聞きたいの」

 その時だった、部屋がざわついた。

 何事かと思って振り向けば、後ろにはゼストがいる。

「ゼスト……どうしてここに?」

「アーネストが来たと聞いてな、嫌な予感がして追ってきた。アーネスト、何度も言うが、俺はアンジュしか見えていないし、こんな嫌がらせをするなら法的に訴える」

 途端にアーネストの目から涙が落ちた。

 すると、病室にいた負傷兵がどよめいて、「ゼスト王の薄情者」とコールされる。

 しかし、ゼストは顔色を変えずにアーネストを睨みつけていた。

「沈まれ! ここの者たちはよく頑張ってくれた、本当にありがとう。恐怖と戦ってくれたこと、今も戦っていることに謝罪する」

 ゼストは頭を下げると、シーンと静まりかえる。

「やめなさい。強国の王が兵士に頭を下げるなど! 統率が効かなくなるわよ?」

 アーネストが腕を組んで顔を横に向けた。

 汚いものでも見るように、ゼストを見下している。

「圧力による統率に幸せはない。俺が学んだことだ」

「そう。私が欲しかった国はそのうち滅びるかもしれないわ」

「欲しかった国?」

「そう、私はこの国が欲しかった。今でも欲しいわ」

 アーネストの言葉にアンジュは胸を詰まらせた。

 このまま、アーネストの言葉を真に受けてほしくはない。

 彼女はゼストを愛している。

 好きという軽い気持ちではなく、深い嫉妬が沸くほどに。

 アンジュはふたりの間で静かに言った。

「もうやめて? ゼスト、聞いて? アーネストはゼストを好きなのよ。だからこんなところまで来てるの。私に意地悪を言いにきたのはついでよ? ね? アーネスト」

「ち、違うっ! そんなわけないわっ」

「でも、この病院なら、こっそり来て帰ることもできたのに、外交官を通したじゃない。ゼストに知らせたかったからでしょ?」

 アンジュが言うと、アーネストは黙りこんだ。

 ゼストは頭を抱えると、アーネストとアンジュの腕を引いて、エントランスホールに連れ出される。

 そして、困ったような顔でアーネストを見つめた。

「そうなのか?」

「本当のことなんて言うと思う?」

「そうだよな。わかってる。でもアーネスト。来るなら正々堂々と遊びに来ればいい。アンジュへ嫌がらせの言葉を言えば、俺が許さない」

「そういうのが……嫌だから、こっそり来たんじゃない! 相変わらず何もわからない男ね!」

「アーネスト?」

 ゼストは首をかしげている。

 彼は本当に、今はアンジュのことでいっぱいで、アーネストには嫌われていると思い込んでいるようだ。

 アンジュも助け船を出したいが、話がこじれそうで何も言い言葉が見つからない。

 おどおどしていると、アーネストはフンと鼻を鳴らす。

「ゼスト。今日はもういいわ。それより、アーネスト様とふたりで慰問して、少しお茶でも飲んで帰ろうと思うの」

「アンジュ? 私あなたの敵よ?」

 アーネストは目を丸めた。

 確かに敵だ。

 でも同時に、ゼストを好きという意味では仲間でもある。

 場合によっては、彼女の立場が理解できる日が来るかもしれない。

「私、アーネストの嫌味って、見た目とは違うから面白くて好きなんです。上品なイメージなのに、どんどん崩れていくんだもの。私たち夫婦の、のぞき見はよしてほしいけど」

 しれっとアンジュが言うと、ゼストの目が丸くなった。

「のぞき見⁉ アーネスト、覗いているのか?」 

「癖よ。ゼストはしっかり男として機能しているのか、前妻として見届ける義務があるわ」

「義務などない!」

 ゼストは顔を真っ赤にすると、護衛が声を出さずに肩を震わせた。

 眉間に皺を寄せると、彼はアンジュのことをじっと見つめてくる。

「本当にふたりきりで大丈夫か? アンジュ」

「ええ。アーネスト様に魔法でも教えてもらおうかな」

 にこりとほほ笑むと、アーネストがチッと舌打ちした。

 あまりに下品なことなので、アンジュが目を見開いた。

「本当に仲良しね! 今日はもういいわ。また来るから。アンジュに会いに」

「ええ」

 アンジュはにこやかにうなずくと、気のせいか、アーネストもわずかにほほ笑んでくれたような気がした。

 そのまま彼女は病院を出て行くと、ゼストは肩を落とした。

「また来るのか?」

「前妻が元夫となかなか離れないことは、よくあることよ?」

「俺とアーネストはそんな深い仲じゃないぞ? 俺は虫けらのように扱われてな?」

「まあまあ、これも大事なことよ。私、慰問に戻るわ」

 アンジュはアーネストに手を振って、病室に戻った。

 しかし、話を聞いていた兵士は色めきだち、質問攻めにあってしまう。

 結局、アンジュの略奪愛なのかと言われたときは、否定するのに必死だった。

 城に戻ると、ゼストは書斎にこもり、仕事をすぐに始めた。

邪魔にならないようにそばにいようと扉をノックする。

「アンジュよ」

「ああ、入れ」

「まあ、すごい書類」

 目に飛び込んできた紙の束に驚き、声をあげていた。

 思わず近寄って一枚一枚手にして見つめしまうと、そのどれもが、側室についてのことだった。

『側室解体』の言葉が目に飛び込んできて、思わずゼストを見つめた。

「これ、どういうこと?」

「俺に側室はいらない。国もそのうち、一夫多妻を廃止にする」

「え……。側室はともかく、一夫多妻は国の歴史でしょう? そんな簡単なことだとは思えないけれど」

「簡単ではないが、話はナンから聞いて、事情を調べさせた」

 その言葉にアンジュは顔を強張らせた。

 彼女の母親の身に起こったこと、彼女の父親の怠慢。

 すべては一夫多妻が当たり前にあることから生まれる、悲劇だった。

 この国の女性は、その日を暮らすために、今もどこかで体を売っている。

 それをゼストは止めようとしているのだろう。

「だったら、私も手伝わせて? ロイナー国をモデルにして、国を作るのはどうかしら?」 

「だが、国力の差がある。この国は男が武力に打ち込むからこそ、軍が強い」

「でも、ロイナー国は外交には長けているの。国の頭脳の選りすぐりを選んで、必死に国の為に動いてもらうわ。私も、自国のことだけを考えてオーフィリア国に来たの。軍の増強だけがすべてじゃないわ」

「だがーー」

「というか、魔法使いがいるのだから、これ以上はオーフィリア国を敵にまわさないわ」

「それは一理ある、そして、アーネストを利用すればいいわけか」

「利用じゃなく、知恵を借りる! 彼女は頭がいいわ。ちゃんと話をすれば、きっと戦争なんて起きずに、この地域は平和になると思う」

「アンジュだって、負けず劣らず、すごいぞ。一夫多妻についても、早急に終わらせることを臣下とともに話しあおう。場合によっては、国民に問うべきだしな」

 アンジュは深く頷いた。

 オーフィリア国にいるからと言って、すべての人間が一夫多妻の恩恵に預かっているわけじゃない。

 むしろ、それを利用している人間だけが、この国でのうのうと暮らしている。

 ナンやルドルフのように、真面目な人間だっているのだ。

 彼らような真面目な人間のことをきちんと保障することが、最優先だ。

「私、ロイナー国の兄に手紙を出すわ。今度会ってほしいって」 

「ありがとう、アンジュ」

 言うなり、キスをされてしまう。

 いきなりで驚いて、目を瞬かせた。

 気が付けば、顔を近くに寄せていたことに気がつかなかったことが、自分でも驚いている。

「夜まで待てるか?」

 アンジュは首を振った。

 アーネストにゼストを盗られたくない。

「でも、私たちのこと、魔法で見てるって」

「じゃあ、見せつけるまでだろう?」

「で、でも、ここは大切な書類のある書斎よ」

「でも、待っていられない。俺の代わりに椅子に座れ」

 アンジュは言われるままに座ると、そっと椅子が引かれた。

 何をされるのかとおどおどしていると、スカートが捲りあげられる。

 そして、そのままドロワースも引き下ろされた。

「誰か来るかもしれないのにっ」

「じゃあ、鍵を掛ける。でも、ふたりだけ、異変に気が付くやつがいる」

「セイ?」

「ナンもだ。仕事中は仕事をしろと言われているし、ナンは子づくりに関しての勘が冴えている、バレバレだ」

 考えただけでも蜜が溢れだしてきて、腹の奥がじんじんしてくる。

 ゼストは立ち上がり、そっと鍵を閉めた。

 そして、跪くと足を強引に開かされる。

「もっと開いて?」

「こう?」

「そう。縛っていい?」

「えっ!」

 許可もしないまま、ゼストは手持ちの紐をもってきて、アンジュの腕を後ろでに縛ってしまう。

 そして、また屈むとゼストは言うのだ。

「囚われのお姫さまみたいだ」

「んっ」

 言葉を言われただけでも、息がかかって秘丘を刺激した。

 とろりと蜜が溢れだして、椅子を汚してしまう。

 そこへ、ゼストの長い指が蜜芽を弄りまわし始めた。

「んんっ!」

「アンジュ。どうだ?」

「いつもより、変な気分……。ゼストが悪い人に見える……んんっ!」

「じゃあ、俺は悪い奴で、アーネストの手先とか? 酷い目に合わせてる」

「あっあっ!」

「身体が反応して、ひくついてる。アンジュ。子供は何人欲しい?」

「たくさん……。ゼストが愛してくれるまで」

「子沢山の宮中も悪くない……。じゃあ、こっちもたっぷりかわいがろう」

 じゅぷじゅぷと音を立てて、抜き差しされて、アンジュは足を閉じようと必死になるが、ゼストが抑えていて無理だった。

 内またを摩られながら、内壁を擦りあげられて今にもとろけてしまいそうになる。

「あっあぁあ!」

 ゼストの大切な書類が目に入ると、余計にいけないことをしている気分にさせられた。

 大切な国の為の書類を前に、ゼストの座っていた椅子に座り、彼から弄りまわされている。

 セイもナンもそのうちに気が付くと思い堪えようと思うと、余計に淫らになってしまう。

 激しい水温が書斎に響いて、抜き差しされると彼の手が蜜で塗れていることを確認した。

 ずっぷりと奥深くまで入っていた指はてらてらと光に当たり煌めく。

「あっあっ。もう、いやぁ」

「ダメだよ、拷問は終わらない。アンジュは俺のことをどのくらい好きだ?」

 指がまた突き入れられて、めちゃくちゃに掻き混ぜられる。

「ひぁあ……あぁ……あぁああ!」

「答えたほうがいいぞ?」

「誰よりも好き。もう何度も言ってるわ」

「でも、もしも他に男が現れたら?」

「ゼストを選ぶに決まっているじゃない!」

「なにか酷い交換条件を出されて、身体を差し出すことになったら? こんな風に拷問されて。王妃ならあるかも」

 アンジュは首を横に振った。

 その時は、もはや愛し合う行為とはかけ離れたものだ。

 そこまでゼストが心配しなくてもいいだろうし、彼が国を守っているうちは、自身の身が危険にさらされることはないと信じている。

「そんなことないから。信じてる」

「じゃあ、指を増やしてあげるよ」

「あんっ!」

 ねじ込まれて、さらに掻き混ぜられると意識が朦朧としていくる。

 何も考えられなくなってきて、うわ言のようにゼストの名前を呼んでいた。

「ちょうだい……もうこんなのいやぁ……」

「どうして?」

「だって愛されてないもの」

「確かに、これは俺の楽しみだな」

 彼はするすると紐をほどき、アンジュを開放した。

 そして、椅子にゼストが腰かける。

「俺のほうを向いてまたがって? 自分で入れて」

「うん」

 アンジュは胸を鳴らせながらスカートを捲ると、そっとゼストの上にまたがり、蜜口に熱をあてた。

 そのまま腰を下ろし、ゆっくりと貫かれるように体重を落とす。

「んんんっ!」

「アンジュ」

 甘えた声とともに唇をふさがれる。

 息もできなくなって、アンジュはもがいた。

「ふあぁっ」

「キスしたい。アンジュを全部欲しい」

「そんな……こと……ふぁんっ」

 口内を舐られながら、熱が腹の中で蠢いていた。

 両方を同時に攻められて、今にも果てそうになる。

 とろけるような感覚に襲われつつ、アンジュは舌を絡めてゼストのキスに夢中になった。

 涎に塗れながら、猛りが腹の奥でさらに膨らんでいく。

 今にも破裂しそうなほどになっていた。

「んんっ……」

 とろとろになっていると、腰をもたれて揺さぶられる。

 その途端にアンジュは快楽を呼び戻されて目を剥いた。

「はぁあっ!」

 何度も激しく奥にあてられて、蜜道がきつく狭くなる。

「いつもと違うといいだろう?」

「うん……。でも、書斎はダメよ」

「じゃあ、庭園ならいいか?」

「それはもっとだめっ」

 甘えて訴えると、腰を使われて奥を突きあげられた。

 激しくされて、今にも果てそうになる。

 ガンガンと突かれているうちに、アンジュの意識は次第にとろけてしまう。

 隘路は猛りを咥えて放さず、突きあげる力が強くなっていた。

 ゼストの喘ぎ声が漏れだして、耳朶でくすぐるように聞こえてくる。

「アンジュ……アンジュ……くぅう……」

「ゼスト……。たっぷりくださいっ」

 その刹那、腹の中で白濁が飛散した。

 そして、腹の奥に吸い込まれる。

「んんっ!」

 体を震わせながら飲み干すと、がっくりと力が抜けてしまう。

 しばらく動けないでいると、ゼストがそっと囁いた。

「アンクレットの力以上だな」

「そうね……」

 アンジュはうっとりしながら言うと、彼の胸に身を埋めてしばらく余韻に浸った。

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