回想 ―昨夜の出来事―



 あ、どーもどーも、と比較的軽い調子で、三根はやってきた。


 美咲に譲られ、椅子に腰掛ける。


 龍泉は犯人の背格好しか知らないので、写真ではなく、実物を見て、面通しして欲しいということだった。


 一通り話したあとで、腕を組んでいた三根は俯き、深い溜息を漏らす。


「ど、どうされました?


 あの、美弥さんたちは大丈夫なんですか?」


「いや、なんていうか、まあ。


 ……ああいうときは、すぐ警察を呼べと――


 言っても聞かんのでしょうなあ、あの連中は」


「はあ。

 いろいろ心中お察しします」

と言うと、


「おまけに、うちの娘まで―」

と一際項垂れる。


 やっぱりか……と思った。


 あの中に居れば、三根倫子は比較的常識派に見えるが、所詮、類に呼ばれてきた友なので、大差はない。


「前田さんて、この前殺された八巻さんのとこの社員の方なんですけどね。


 犯人に心当たりがあるようなことを言って飛び出していったので、美弥ちゃんが心配して捜してたようなんですよ。


 夜十時過ぎに前田さんの方から連絡が入ってきて。たむらのある商店街の奥に、アーケードがあるでしょう?


 あそこへ居るって言うんです」


「十時にあの辺って行ったら、ひとっ子ひとり居ないでしょう?」


 相変わらず物騒なことばかりに首を突っ込む美弥に眉をひそめる。


 あの商店街は七時には閉まる。


 あそこに住んでいる者たちも年寄りが多いので、早くに寝てしまっているはずだ。


「前田さん、あそこに犯人をおびき出してたみたいなんです。


 だもんで、美弥ちゃんちでご飯食べてた大ちゃん、洋、倫子、それに吾郎さんが行ったみたいで」


 止めろよ、親……。


「それに、美弥ちゃんが電話で呼んだ一美ちゃんが加わった、と」

と指を折る。


 総勢六人、まあ、一美と大輔が居れば、大概のことは大丈夫だとは思うが。


 それにしても……。


 龍泉と三根は同時に溜息をもらした。


 なんだかこの町の警察は、犯人を引き渡すだけのところだと思われてはいないだろうか?





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