10-③
「逃がす訳ないだろう!屋上はすべて閉鎖してある!」
浅型は改めて拳銃を構えて叫んだ。
「ふふふ、浅型警部。君は何度も繰り返し言っていたはずだ。もしこの場から逃げることができるものがいるとすれば、それは空を飛ぶ鳥だけだと!!」
そう言い終わるやいなや、恰幅のよい怪盗クロウの身体からプシューと白い煙が吐き出されていく!
みるみるうちに視界が白く染まっていく中、浅型は先ほどまで怪盗クロウがいた位置にタックルを行おうとするが、残念ながら空振りに終わる…
そして白い煙が少しずつ晴れてきた頃、怪盗クロウの声が遙か上空から降ってきたのであった。
「また会おう!名探偵!次こそは儂が勝つ!」
………
……
…
白い煙がすべて晴れたときには怪盗クロウの姿はどこにもなく…まるで鳥のように現場から消えてしまっていた。
「くそ!!怪盗クロウめ!まさかこの包囲から抜け出すとは…」
悔しそうな浅型。
一方、大丸氏からは安堵の声が聞こえた。
「ああ…無事でよかった…私の『ブルーダイヤモンド』」
そして、マスコミ各社からは、
「号外だ!!初めて怪盗クロウがターゲットを盗み損ねた!初敗北だ!」
そうやって騒ぎ立てる周りを尻目に、私は困惑していた。
「え…?あれ…?私のコスプレの感想は?サインは?写真撮影は…?」
………
そして、『アルコバレーノ』を守る戦いから一夜明け…私はぼんやりと雑居ビルの二階に構える「明智探偵事務所」で真っ白に燃え尽きた灰のようになっていた。
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