10-②
扉を開けると、そこには二人の男が『アルコバレーノ』の前に佇んでいるのが目に入った。
ひとりは恰幅のよいスーツの男。そしてもう一人は緑色のへんちくりんな格好の男。そのうちの一人、恰幅のよいスーツの男がこちらを振り返ってこう言った。
「やぁ、浅型警部。偽物逮捕、ご苦労様。君があんなやつに気を取られてしまうから、今回も楽勝かと思ってしまったよ。」
「くそ!あいつ、バカにしやがって!」
浅型は歯をギリリと噛み締め、もう一人を見る。その男は、どうも呆然としてしまっているようだ。無理もない…浅型はホルスターから拳銃を抜くと怪盗クロウに突きつけながら、緑の男に話しかける。
「そこの緑のあなた、危険です。その男は怪盗クロウ!国際指名手配も行われている凶悪犯です!今すぐその場を離れてください!」
しかし、なぜかその男は首をふると、こう答えた。
「そういうわけにはいきません。今ここで私が逃げれば、この『アルコバレーノ』は彼に奪われてしまうでしょう。それだけはなんとしても避けなければならない。」
なんという勇気のある男なのだ…浅型は感心した。そして、合わせて自分の見る目の無さを反省した。この男はその特徴から、先ほど連絡を受けていた緑の怪しい男に間違いないはずだが、彼は怪盗クロウなどでは決してなく、勇敢で聡明な一市民だったのだ。
その言葉を聞き、怪盗クロウは続ける。
「その通りだよ。浅型警部。君はすでに二度彼に助けられている。一度目は、彼以外の誰も私の正体に気づかなかった時。そして二度目は今だ。この探偵君が言うように、彼がもし、いなくなれば儂から『アルコバレーノ』を守るものは一人もいなくなるのだからね。」
怪盗クロウの動向を見張る明智、明智の後ろの『ブルーダイヤモンド』を狙う怪盗クロウ。そして、明智を守りつつ怪盗クロウをねらう浅型。三者がそれぞれお互いを意識し、誰も動けない緊迫した空気が屋上全体を支配していた…
「ふっ…」突然笑った怪盗クロウは、
「今回はそこの探偵君に免じて、残念だが儂の負けとしておこうか。」と言った。
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