9-③

「今、この場にいるもの全員が、逮捕された男を怪盗クロウだと勘違いしている。今であれば、警戒態勢は大幅に緩和される上に、顔認証センサーも大丸氏に変装している儂には全く効果を発揮しない。今がチャンスだ。」


 そこで、怪盗クロウは大丸氏になりきって、怪盗クロウ逮捕のアナウンスを自ら行った後、堂々とした歩みで、本物の『ブルーダイヤモンド』に近づき、手を伸ばしたのであった。


 ………


 その時である。緑色のとんがり帽子に、緑色のマントコート、そして真っ黒なブーツという宝石展には見るからに場違いな男が現れ、「残念ながら、そこまでですよ…」と告げられたのは。


「やはり、どこに不備があったのかわからんな…」

 そう呟いた怪盗クロウのもとに、突然、屋上の扉がバン!と開き、浅型とともに、本物の大丸氏が駆け込んできた。


「怪盗クロウ!!よくもに睡眠薬を飲ませ!倉庫に閉じこめてくれたな!」


 そこで、怪盗クロウはハッと気付く。

「なるほど…まさか大丸氏の一人称がではなくだったとは…素晴らしい観察力だ。名探偵。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る