9-②

 怪盗クロウはハロウィン当日の昼ごろに、まず大丸氏の秘書に変装すると、飲物に強力な睡眠薬を混ぜて大丸氏を眠らせ、大丸屋の倉庫へと閉じ込めた。


 その後すぐに大丸氏に変装すると、浅型との打ち合わせに臨んだ。表情では不安な気持ちを表しながら、「本当に、本当によろしくお願いします。の『ブルーダイヤモンド』を守ってください!」と語る一方で、心の中では浅型が自身で警備情報を全て漏らしていることに、「浅型警部。君はいつになったら儂の変装を見破ることが出来るのかな?」とほくそ笑んでいた。


 そして、イベントが開始すると会場内をゆっくりと回りながら、『アルコバレーノ』に近づくタイミングを伺っていた。


………

……


 状況が変わったのは、イベント開始から少したったあたりでのことだった。ひとりのバカな男が奇声を上げて『ブルーダイヤモンド』へと突撃していったのだ。


「ここでまさか模倣犯が現れるとは…だが、バカなやつだ。偽物の『ブルーダイヤモンド』であるとはいえ、あの周辺には非常に厳重な警戒が敷かれているし、顔認証センサーまで設置されている。準備もなしに上手く行くわけがない。」

 予想通り、ソイツはすぐに浅型に取り押さえられ、ジタバタと叫びながら無駄な抵抗をしていた。


「なんと、情けないやつだ。往生際が悪い…」

 怪盗クロウは呆れるが、浅型が放った、

「往生際が悪いぞ、怪盗クロウ。これで貴様も年貢の納め時だ…」

 という言葉を聞き、この男は利用出来ると考えた。

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