第9話:怪盗、回想する

9-①

「よくぞ見破った!!!名探偵!!その通り!儂こそが怪盗クロウである!!!」

 怪盗クロウは自身の正体を明かしながら、一方で、今回の計画のどこに犯行がわかる部分があるのか思い返していた。


………

……


 怪盗クロウが予告状を送ったのは、宝石展開始の前日だった。


 彼のルールの一つに予告状を送付することであえてターゲットが狙われていることを知らせるが、これには盗みに自信があるという理由の他に、不安を抱かせることでターゲットを疲弊させ、警備体制に疑心暗鬼になるように仕向けるという理由もあった。

 これにより、わざわざ犯行当日になって配置や警備体制を変更する者も多く、そのせいで逆に現場を混乱させてしまうのだ。


「大丸氏の性格上、配置を変えてくるとは思っていたが、まさかここまで予想通りに動いてくれるとはな…」

 ハロウィン前夜、ドローンを使って屋上の様子を確認していた怪盗クロウは呟いた。


 大丸屋の悪手は他にもある。前日の深夜になって保管場所を変更したにも関わらず、情報漏洩を警戒しすぎてしまい、その情報は限られた一部にしか共有されていなかった。このため、当日、本物の『ブルーダイヤモンド』の警戒がかなり薄くなっていた。


 加えて、『ブルーダイヤモンド』の周辺には本物、偽物を問わず、顔認証によるセンサーが設置されているという、気付いてはいないが、大きな油断が、確かに浅型や大丸氏にはあった。怪盗クロウが得意としているものが変装だというのに…

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