第7話:探偵、感激する
7-①
19時。
ついに待ちに待っていたイベントが開始した。50名の入場者達は、心なしかシックな装いが多いような気はするが、皆思い思いに屋上の展示会場を回っているようだ。
私自身も完璧な装いで、皆の熱い視線を集めてしまっているのがよくわかる。先程からチラチラとこちらをみている人がいるからだ。特に、あの柱の陰に隠れている彼など、なんと熱い視線で私のことを見つめてきているのか…
「やはりこの服で正解だったな。しかし、残念ながらシャイな人が多い様子だ…こんなに熱い視線をこちらに向けてくれるのであれば、勇気を出して声をかけてきてくれればよいのに」
今回のコスプレが自信作ということもあって、恐らく私は会場内で大人気になると考えていた。そこで、今日のためにオリジナルのサインまで考えてきたのだが…
残念ながらいくら待てども誰からも声をかけられることはなく、私は肩を落とすのであった。
「いかん、いかん。私の目的はこれではない。」
気を取り直して、改めて展示を見ることにする。
屋上の広さは、およそ500平方メートルほどもあり、観客やスタッフを含めて100名を超える人間が入っていても、かなり広々としている空間となっていた。
その中で入口からすぐ、およそ4分の3ほどを宝石展が占め、所狭しと様々な宝石が輝いていた。中央にはメディアで最近話題となっている『ブルーダイヤモンド』が月の光を受けて、青く輝いているようであった。
一方、『ハイニナルクエスト』のイベント展示は、入って一番奥のエリアとなっていた。今回一番のメインである『アルコバレーノ』は、そのイベント展示の中でも特に奥まった所にあり、入り口からは最も遠いところにあった。だが、その神々しい姿は他のどんな宝石よりも美しく、そしてぼんやりと蒼く輝いていた。
「なんという美しい姿なんだ…これほどすばらしい展示がこの日本で見られるとは」
私は感動に打ち震え、少し涙ぐんでしまったのだった。
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