第6話:刑事、確信する

6-①

 明智が意気込みを新たにしているのとほぼ同時刻、大丸屋の役員室にて、大丸氏と浅型は最終の打ち合わせを行っていた。


「いよいよですな。」

 浅型が大丸氏に声をかけた。


「ええ。予告状が来てからというもの、はっきり言って、今まで生きた心地がしませんでした…」

 疲れ切った様子でソファーに座る大丸氏が答えた。


 もうこの部屋での打ち合わせも何度目だろうか。打倒怪盗クロウに向けて、彼等は連日夜遅くまで意見交換を重ねていた。


 だが、その苦しい日々も今日これまで。浅型には、ネズミ一匹であっても抜け出すことの出来ない完璧な警備計画をたてた自負があった。


 第一に、50名の入場者に対して1対1の警備体制だ。入場者には、整理券を配布したタイミングから、気付かれないよう少し離れた位置で本日のイベント終了まで尾行がつくようにした。


 第二に、『ブルーダイヤモンド』や『アルコバレーノ』周辺には、顔認証を活用し、浅型や大丸氏といった登録済みの限られた人間以外が手を触れようとすると、すぐさま屋上全体に響く大きなアラートがなり、警備員が飛んでくるようにした。


 第三に、すり替え対策。怪盗クロウは、本物とほぼそっくりのものを用意してくることも多いが、今回はイベント展示場内の一般客撮影禁止とする事で展示してあるもののデータを入手できないようにした。


 そして、第四に、万が一があった場合に怪盗クロウが逃走できなくするために、イベント開始直後から屋上のすべての扉を施錠できる手筈を整えた。

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