5-②

……………………………………………………………

 ハロウィンイベント!

 整理券入手しました!

『例のアレ』ゲットしてハイになってやります!

                  闇夜の狩人

……………………………………………………………


「やはり、こういう輩が出てきてしまったか…」

 私は頭を抱えた。

 こういった限定イベントに参加する人の大半は、もちろん礼儀正しいファンで占められているのだが、一部の目立ちたがり屋のかまってちゃんが誰もやらないことをやって、悪目立ちしようとしてしまうものなのだ。


 特に、今回の『ハイニナルクエスト』は一般の人気も高いゲームで、かつ初展示ということもあって、メディアでも数多く取り上げられていたため、必ずひとりはこういった輩が出てくるのではと危惧していた。


「もし、そんな事件が起こってしまえばせっかく準備してきたコスプレがすべて無駄になってしまう。それだけは死んでも阻止しなければならない!今日の私はなんとしても『アッシュ』になりきって最高の思い出を作るのだ!」

 朝早くからずっとこのイベントを楽しみにし続け、すでに深夜のようにテンションがハイになっていた私は、なんとしてもこの蛮行を阻止することを心に誓った。


 そして、18時。開場1時間前。

 私は百貨店のトイレに行き、持ってきていた『アッシュ』のコスプレ衣装へと着替えた。緑色のとんがり帽子に、緑色のマントコート。そして足元にはクールに輝く真っ黒なブーツ。


「完璧だ…」

 私は自分の姿に打ち震えた。


 そうして今回のイベントへの意気込みを新たにすると、私はまだ見ぬ闇夜の狩人へと心の中でそっと呟いた。


「私という名探偵がこの場にいたことが、キミにとっては運の尽きだったな…私に対して喧嘩を売ったこと、後悔させてやるぞ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る