4-②

『ブルーダイヤモンド』の移動は深夜、ほんのわずかな大丸屋の従業員と、浅型直属の部下達の手によって慎重に行われた。


 この移動作業の際に、『ブルーダイヤモンド』のすり替えが行われてしまっては元も子もない。そこで、浅型は、関係者同士を必ず従業員と警察のペアで行動するようにした。こうすることで、不審な行動を行っていないか相互に確認をとりながら、宝石展すぐ隣にある『ハイ二ナルクエスト』のイベント展示場へと『ブルーダイヤモンド』を移動した。


 そして、念には念を入れて、現時点ではすり替えが発生していないことを、月光にかざしてしっかりと全関係者で確認をした上で、浅型・大丸氏のペアによって『アルコバレーノ』の宝飾の一部と取り替えられた。


 また、これまで『ブルーダイヤモンド』が展示されていた箇所には、同サイズのダイヤモンドを設置し、宝石がすり替えられていることがわからないよう、ハロウィン限定と銘打った、特殊なライトアップを施すことになった。


「これで、怪盗クロウと言えども『ブルーダイヤモンド』を盗み出すことは不可能でしょう。」

 浅型は自信をもって言った。


「なんとか!なんとか頼みますよ!我が輩にとって、あれは命より大切なものなのです。」

 大丸氏は再度確認した。


「任せてください。警察の威信にかけても守り抜きますよ。明日の夜は、屋上に50人以上の厳重警戒を敷かせていただきます。この包囲網からもし抜け出せる者がいるとするならば、空を飛ぶことができるものだけですよ。」

 そう言って、浅型は笑うと、明日の準備がありますので…とその場を後にした。


………

……


 そんな様子を、遥か上空のドローンからまさか撮影しているものの姿があろうとは、この時彼らは誰一人として知る由もなかった…

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