2-②

 怪盗クロウの予告状には特別な細工がある…


 そういった噂が巷には流れていたものの、細工の詳細自体は警察内部のみで共有され、トップシークレットとして扱われていた。


 その細工というのは、予告状を光にかざすと、手紙の背景に怪盗クロウのシンボルマークである『カラス』がぼんやりと浮かび上がるようになっているのだ。


 今回、大丸屋に届いた予告状は、光にかざすとしっかりとシンボルマークが浮かび上がっており、これによって、浅型は今回の予告状が本物であると判断した。


 大丸氏は届いた予告状が本物であることがわかると、すぐに浅型を含めて緊急の対策会議を開いた。


 浅型は当初公開を取りやめた方が良いと忠告した。しかし、残念ながら経営不振にあえぐ大丸屋で、今回一番の目玉である『ブルーダイヤモンド』の展示を止めるという選択肢はなかった。


 そこで、大丸氏は一つの策を打つことにする。予告状に記載されている、南瓜と仮装で街が溢れる夜、すなわちハロウィンの夜にだけ、展示してある『ブルーダイヤモンド』の場所を、一時的に本来の場所から別の場所にすり替えることにしたのだ。


 その場所とは、宝石展の一部を間借りして、屋上フロアで同時開催されていた、人気ゲーム『ハイ二ナルクエスト』の展示会場の中だった。


 『ハイニナルクエスト』は、ゲームでありながら映画のような美麗でオシャレな映像と、一つ一つが芸術のような武装の数々、そして主人公『アッシュ』の、剣をふればふるほどハイになりキャラが変わっていくという独特の世界観から、世界中のマニアから人気を博している。


 今回大丸屋では『ハイニナルクエスト』初の展示会イベントとして、設定資料などの他に武装のレプリカの展示も行われる予定となっていた。


 オーナーの大丸氏はこの武装の展示に目を付け、その中でアッシュがもつ大剣『アルコバレーノ』の宝飾の中に『ブルーダイヤモンド』を紛れ込ませることにしたのだった。

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