メリークリスマス(塔~世界の正逆位置)
「これでよし……」
タワー兄弟の部屋についた私は、仲良く眠る二人の足元に、用意していたおもちゃの詰め合わせを置いた。どちらも悲しい意味を持ち合わており、勘違いされたり嫌われたりしてしまう彼等が、楽しい時間を過ごせるように。
「お待たせ、そろそろ星の使者さんが来てくれると思うんだけど……」
タワー兄弟の部屋を出て、外に来た私は、星の世界からやってくると言っていた使者さんを探していた。
「あいつじゃね? あのキラキラして飛び上がっているやつ」
デビちゃんが指さす方向には、彼の言う通りキラキラと光りながら飛び跳ねてアピールしている星のような発光物体がいた。近付き挨拶をすると、くるくると回って挨拶を返してくれた。
「これを、スターちゃん姉妹とルナさん達に。これは太陽さん達に渡してください」
スターちゃんには折り畳み式の望遠鏡と星座早見表のセットを、スターさんには家庭用プラネタリウムを用意した。スターちゃんが大好きな仲間たちを、もっとよく見られるように。目に光が入っていないスターさんが、希望を持てるように。
ルナさんたちにはウサギのぬいぐるみを用意した。月にまつわるお祭りがもっと楽しめるように。
太陽さんたちには、髪留めを用意した。いつも元気をくれる太陽さんと、不思議なお話を聞かせてくれる地底人さんに、消えることのない想いが伝わるように。
「これはお礼として受け取ってください。金平糖に見立てたキーホルダーです」
そういってキーホルダーを使者さんに渡すと、嬉しそうに回りながら、空遠くに消えていった。
「最後は審判たちと、世界さんたちだね」
審判さんには手動コーヒーミルを、逆位置さんには編み物の一式を用意した。何でもかんでも審議したがる彼に、コーヒーの香りを感じながら落ち着いてもらえるように。愛情深く親身になる彼には、愛を形に出来るように。
世界さんには百科事典を、逆位置さんには新しい花の種を用意した。完璧主義者の彼女が、気が済むまで情報を得られるように。自分には何もできないと思い込んでいる彼女が、新しい生命を生み出すことができると気付けるように。
「デビちゃん、ありがとう。お陰で全員渡し終わったよ」
「あ? 一人忘れてんだろ」
「え? そんなはずはないんだけど……」
「ほらよ、これは俺様達からのプレゼントだ」
デビちゃんはそう言って、私の持っていた大きな袋から、いつの間に入っていたのかプレゼント箱を取り出して、私に渡してきた。箱を包む梱包用紙には、カードたちからの各々のメッセージが書かれており、中をあけるとそこには、私好みの布と、綺麗なボタンがたくさん入っていた。
「気に入ったか? 俺様たちで選んだんだぜ?」
「……もしかして、みんな気が付いていたの?」
「お前がこそこそなんかしてんなーと思ったからな。それで俺様たちからもサプライズすっかってなったんだよ」
最初から最後までかっこよく決めたデビちゃんは、みんなを代表して一言、『メリークリスマス』と言って笑った。
私と彼等の日常は、あまりにも非現実的すぎる(クリスマス特別編) 死神の嫁 @Riris0113
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