メリークリスマス(節制・悪魔の正逆位置)
死神くんに別れを言い、次に向かったのは節制さんたちの部屋。正位置さんには天秤を、逆位置さんにはお茶会セットを用意した。調和の意味を考える正位置さんの助けになるように。人との距離がうまく図れない逆位置さんに、距離を縮めるきっかけが作れるように。
「さて……こいつらも難関なんだよな」
お察しの人が多いとは思うが、次は悪魔兄弟の部屋だ。デビちゃんには確実に𠮟られるとして、ディアブロはカードの中でも人一倍警戒心が強い。この格好で訪れようものなら、私だと気が付かずに攻撃を仕掛けてくる可能性もある。
「お前な、悪魔の俺様と相反する格好で来んなよな……」
「そっち? 確かにそうだけど、せっかくなら楽しんでほしかったから……」
「まあいいけどよ……んでこれなんだ?」
案の定デビちゃんの部屋に入るなり、呆れられたが想像してたより怒られなかった。そんな彼には、低反発枕を用意した。彼なりに色々苦悩を抱え、夜もそんなに眠れていないから、深い眠りに誘われるように。完全オーダーメイドで、彼の為に角入れ付きにしたため、どの角度で寝ても邪魔にならない。
「俺様の為に……わざわざ作らせたのかよ」
「日頃のお礼よ、こんなものでは到底足りないけど……いつもありがとうね」
これからディアブロの部屋へ行くというと、危ないかもしれないから付いてきてくれるといい、二人で部屋に入ろうと、ドアに手をかける。すると、部屋の中からカチャっという音がして何かを巻き取っているような音がし始めた。
「下がってろ、あけると同時にナイフが飛んでくるぞ」
デビちゃんの言葉通り、ドアが開いたとたん眉間の位置目掛けてナイフが物凄い速さで飛んできた。素早くデビちゃんが翼で風を起こし、ナイフを地面に落とすと、私からプレゼントを奪い、部屋へ放り投げてから扉を閉めた。そのまま振り返ることなく私を抱き上げると、バサバサと飛び上がり、タワーさんの世界へと連れていかれるのだった。
「……兄さん、流石です。あの瞬発力といい、コントロール力といい……素晴らしい」
二人がいなくなった後、地面に落ちていたナイフを拾い上げ、投げ入れられた主からのプレゼントを片手に持った悪魔が、恍惚の表情を浮かべていた。
「ところでよ、あいつには何を用意したんだ?」
移動しながら、デビちゃんは私にそう聞いた。ディアブロには翼の手入れ用ブラシ一式を用意していた。友達として、彼の手入れをしてあげたいと思っていたからだ。
「中々考えたな、俺様からも言っておいてやるよ。友達ってのは背中を預けられる存在だってな」
「なんか違う気もするけど……まあいいか」
「一々置きに行くのもめんどくせーだろ、俺様が転送してやろうか?」
「それじゃ意味がないの、直接渡せる人には渡したいから……」
「まあ俺様はどっちでもいいけどな、急降下すっからしがみついとけよ!」
そう言って、デビちゃんはタワーさんたちの部屋へ急降下した。
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