入学初日4-佐倉

「さくらさんって言うんだ。素敵な名前だね。」



ん?多分勘違いしてるな、この子。それ下の名前ちゃいますで。「苗字に素敵な名前ですね」って言うか普通。あれ、言うのか?もしかしたら、言うのかも?うーん、私、確証を得るためのサンプルとして十分な数の友達がいないからもしかしたら苗字聞いて「素敵な名前ですね」って言うの流行りなのかも。でもさ「橘さん」とか「結城さん」とかに「素敵な名前ですね」っていうのはわかる。この子はもしかすると毒島さんとかにも「素敵な名前ですね」って言うのか?それ地獄じゃない?かなり肝座ってなきゃ言えないでしょ。それ言われてどうすんだろう、毒島さん。「なら、嫁入りしてみるか?」と素敵なプロポーズで本心かどうか確かめるのか。いや、それ苗字じゃないところで嫌がられるやろ。毒島さんって結婚難儀だな。普通にこんなこと考えたことなかったわ。ありがとう、考える機会をくれて。

もし、名字と分かって言ったのなら策士だけど、いやなんの策士やねん。ツッコむな、テンポ悪い。多分、下の名前と思って言ったはずだよね。どうやって訂正しよ。いや、訂正方法は「佐倉は苗字で下の名前は楓です。桜の春から楓の秋か、わかりにくいぞーってね」なんていうの?ここでもう一回名前名乗るメンタルあるなら校門震えながら潜ってないって(本日2度目)。まぁでもとりあえずお礼が安パイ?お礼言っとくか。その時訂正できれば、



「ありがとうございます。」



「鶴見千聖と言います、面白いこと言えないけど仲良くしてくださいね。」



お前、コミュ力強者だろ。下の名前までさらっと名乗って、面白くない保険まで発動させるとは。面白くない保険に加入する人が続出するのは話にオチが求められ始めた時代からだと思う。いやだから、いつもなんの話やねん。

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