入学初日3-B
「私、友達いないんだ」
私も友達いないよって、言うべきかな。「あ、そうなんだ」で会話終わったらどうしよう。会って数分で相手の人間性がわかるわけでもないし、そんな会話のぶった斬りされたら向こう一週間は人に話しかけられなくなっちゃうよ。でも、私に話しかけてるのは間違いないわけで。そこだけは合ってるから「お前じゃねぇよ」って言われることだけはないんだよね。うん、一安心。私、実は友達って苦手なんだ。別にいじめられた経験があるわけでも、裏切られたことがあるわけでもないんだけどね。友達って理想的な関係に思えるじゃん。泣いて笑って。好きな子の話もしたりして。たまに喧嘩して仲直りして。そしてまた次の日一緒に学校に行く。ここまで友達について話したこと、全部素敵だと思う。でも私の中で、素敵は面白いを超える存在じゃないんだ。私の一番嫌いなところなんだよなぁ。友達の空気感って互いに予想通りの動きをして笑い合って「うちら、気が合うね!」って。気が合うことって面白いかな。知ってることが、結果がわかってることが目の前で起きることって面白いこと?その辺りがわたしにはわからなくなっちゃった。こんなこと思ってるくせに自分から普通を外れた、予測不可能な行動に出る勇気はないの。だからせめて、文句も言わず優しく笑って控えめにしてればいいかなって。今のところこの子の予想はできない、次の行動が気になるなんて久しぶりで少しだけほうけてしまった。あ、こっちみてる、いかんいかん、変な子と思われちゃう。あ、変な子と思われる自分って、普通だなぁ。
「えっと、私、さくらって言います。見た目きついといわれがちだけどコミュニケーションが苦手なだけです。」
さくらさんか、最近は入学前に桜散っちゃうよね。春に生まれた子につけられやすい名前だろうな。当たり前はたまらないけど当たり前は楽だから。
「さくらさんって言うんだ。素敵な名前だね。」
素敵以外になんて言うのが面白い正解なんだろう。私にはわからないや。めんどくさいなぁ私。でも、他の人たちと違ってめんどくさいから自分をギリギリ許してるのかも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます