~回想~ 一人目が魔女を知るまで

ユイは落ち着くものを好んでいた。しかしながら己がどんなものを見たり聞いたりすると落ち着くのか。それは定義できていなかった。ユイは自分の部屋の天井を好んでいなかった。それは自分の部屋の天井が落ち着かないものであったからだ。

ユイは比較的インドアな性格であった。今日も友達に遊びに誘われていたが断っていた。ユイは寝転ぶのが好きだった。でも好んだのはうつ伏せだった。仰向けは好きではなかった。勿論それは天井を見たくないからである。うつ伏せになってすることは特になかった。ネットサーフィンをしたりお菓子を食べたり。引きこもりに近いような生活であった。

そんなユイに何かを言う人はいなかった。いわゆる、放任主義な家庭と言えた。もはや放置に近いくらいだった。放任の範疇か、と聞かれると不思議なものだった。しかしながらユイはその現状に不満を抱いてはいなかった。ユイは比較的自由に行きたかった。制限がないのはそれはそれで嫌いだが、自分が制限を感じないことがユイにとっての自由だった。

ユイはとても変わっているという評価を受けている。本人はそれに対して何も感じていないが。それには理由があった。例えばユイは高校生であるが未だに空を飛びたい、とか魔法を使ってみたい。等と言っていた。つまりユイは変わっている。というよりまだ少し未熟だと評価をされていたのだろう。しかしながらユイはとても頭が良く、大人な人と評価も可能ではあった。矛盾に聞こえるかもしれないが。ユイはそんな人だった。ただユイは昔好きだった本に書いてある事をまだ否定できないだけだ。なぜなら否定する要素がないから。

それは、魔法使いが出てくるお話であった。魔法使いは己が魔法を使えることを誰にも話さなかった。しかしながら人を助け続けた。大雑把にはこんなお話だ。つまりユイは魔法使いは隠れて存在しているという事実を否定できないから、信じているのだ。


そしてユイは魔女を見つけた。嘘だとは思わなかった。情報源がとても信用に値するものだったからでは無い。ユイはただ信じることから始める人物であっただけだ。これが嘘だとしても別に己にダメージがないからだ。情報によるとその魔女はいわゆる等価交換をしたいらしい。願いをひとつ叶える代わりに五感の内ひとつを失う。

ユイは一言でこれを、面白いと思った。尚更これは信憑性があると考えた。何故なら例としてこれの対価がお金であったとしよう。魔女であればお金なんか果たして必要であるか?と考えた。つまり物品なら魔女自身で作り出せるということだ。故にユイはもしこの魔女が出した対価が物品の場合少しばかり信憑性は薄くなると考えていた。ということだ。

ユイは今すぐにでも魔女に会いたい。そう思った。外に出ることになるだろうな。そうユイは考えたがそんなのどうでもいい。ユイは浮かんだ欲望に率直に向かっていった。しかしながらユイは魔女にどんな願いを叶えてもらうかは考えていなかった。そんなことユイの頭にはなかったが

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