~回想~ 魔法を使わない魔女の正体
魔女は、コノハは十六歳になった。
魔女はもう戦っていなかった。魔女をとどめているのは恐怖だけだった。
コノハの悪意は萎んでいた。悪意もまたコノハの感情、よってコノハの精神の疲れはコノハの悪意にも及んでいた。ということだ。
コノハはふと、魔法を使おうと思った。用途はなんでもよかった。コノハがなぜ魔法を使ったか、それは単純に今は心のリミッターを解除しても、きっと悪意は暴走しないと思った。
コノハは指を鳴らした。コノハの目の前の蝋燭に火がついた。
魔法を使う感覚をコノハは初めて知った。コノハは感じたことない感覚に包まれた。少なくともそれが悪意でないことはわかった。
コノハは恐怖に潰されていた。恐怖もコノハの感情であるのに萎むことはなかった。魔法を使うことが簡単であることは知っていた。それを体感したのは初めてだった。ゆえにコノハの中の恐怖は大きくなった。しかしコノハはこの恐怖を敵視できなかった。いや。それは正しいことだ。しかしコノハはそれを嫌がった。恐怖に怯える日々は悪意と戦う日々より鬱なものだった。
コノハは目を開けた。コノハは自分の家の天井を気に入っていた。
だから起き上がるのは好きではなかった。天井が目線の先でなくなるから。コノハの中で天井はあくまで目に入るからいいものであって、意識的に見たいものではなかった。
コノハは喫茶店の一席に座っていた。コノハはここのアイスティーをこよなく愛していた。理由は言語化できないものであったが、
コノハは人を観察することを好んだ。これは昔からだ。コノハにとってこれはちっぽけな趣味のようなものだった。だからその日もそうした。
コノハは不思議な話を聞いた。それは魔女の話だ。自分の話ではなかった。そうでないなら誰?私以外に魔女がいる?
コノハは興味を持った。会ってみたいと思った。家族以外の魔法を使える人物に興味があった。それ以上の理由はなかった。恐怖に押しつぶされる日々には刺激がなかった。コノハはそれを欲しただけだ。
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