3人目の拐われた人 ~回想~ 魔女の限界
魔女は考えていた。魔女は己に限界を感じていた。魔女の中の悪意は日に日に強くなっていった。魔女の善意は戦った。何度も、何度も。善意と理性は疲弊した。魔女はそれを感じつつあった。数日前に見つけた犯罪者適性度を調べるサイト、今自分がやったらとても適性があると診断されるかもしれない。そんなことを考えて、笑った。魔女は危険視した。いやずっとしていた。勿論、自分のことだ。
リョウは自分から口を開くことはなかった。コノハと話すことで得られる情報がないことを考えたからか、コノハと話をすることが現在の己の思考のノイズになると判断したか。どちらでもないか、はたまた両方か。コノハは考えていなかった。それについて思考を膨らませることが不必要と考えたからでもある。
彼らの体内時計ではすでに30分は経過していると考えていた。勿論数分の誤差や差異はあったが。
しかしながら、実際に経過していた時間は5分に満たなかった。なぜ彼女らがそれを把握していなかったのかはとても単純な理由で、部屋の中に時計がなかったからである。コノハは少し後悔した。
沈黙は数秒後破られた。勿論、破ったのはリョウでもコノハでもなかった。3人目が部屋から出てきたという知らせだった。ドアが開く音がした。コノハはまるで義務のように、「名前は?」と聞いた。人影は男だった。「ユウ。って呼んでくれていいよ。」男はふふ。と笑いながら言った。そしてこう続けた。
「綺麗な部屋だね。」
「主観的な意見だ。」と、リョウは返した。
「あはは、確かにね。何だか君、友達いなそう。」
「ああ。少ないが、僕は君の顔を知らないが、何でわかったんだい?一方的に僕を知っている、とかかい?」
「うーん。皮肉が通じないタイプか。」
「皮肉だったのか。」
「うん。でも僕、君のことは嫌いじゃないな。」
「僕は君をまだ判断できないけど。」
「そうだね、他者を評価するスピードは人それぞれだ。」
「確かに君の意見は正しいね。そもそもここに評価をする必要があるかは疑問だけどな。」
「勿論。でもそれを判断するのも君だよ。」
ユウは変わらずニコニコしながらリョウの隣に座った。
「そういえば君はなんていうの?僕の名前も教えたんだしぜひ君のも教えてよ。」
「コノハ。」
「そっか。女性一人というのも、寂しいものがありそうだね。」
「杞憂。」
「ん?」
「いや。なんでも。」
ユウは落ち着かないようだった。ユウはリョウの肩を叩いた。
リョウは反応を示さなかった。
「椅子が余ってるんだけど。」
リョウのことを何度つついても反応してくれなく、少し顔を膨らませたユウは言った。
「この意味深な通路って、もう一人いるってことじゃないの?」
「うん。」
「そうじゃないかな。」
コノハとリョウはユウに賛同した。
「なんで無視するのやめたの?リョウくん。」
「無視?」
コノハは手でその会話を静止した。
「見に行こうよ。」
コノハは言った。一人で行ってもいいと考えていたが、二人をこれ以上接触させたままにするのは危険だ。と考えていた。
「ああ。椅子が空いたままというのも何か気に触るものがあるね。」
「気になるし、いいよー。」
コノハは安堵から一度ため息をついた。3人は唯一人が出てきていない通路へ足を進めた。
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