3-5 魔石と下着店
ホテル
駆け抜けている通りには
「だりぃ、ちくしょう、くそったれ、死ぬ、あほくせぇ」
たったかたたったかたと階段を上っていると、抱き上げているベールの少女が退屈そうに
「ちょっと待て、そろそろお前は降りろよ」
階段を百段ほど進んでから、アベルはベールの少女を降ろした。
彼女は
もう追いかけてくる気配はない。
「なんか今日、女抱えて走ってばっかだな」
それも妙な女厳選で、とアベルは心の中で付け足した。
「さっきの子、あなたを探していましたわ。置いてきて良かったのかしら?」
「さっきのって、あの修道女か」
「そう、修道女の子。私に貴方のことを聞きに来たのですわ」
それを聞いてうんざりしながら、アベルは少女を降ろした。
「知りあいじゃねぇし、変な事言ってくるし、いいんだよ」
「珍しいくらい可愛い子だったのに、色々なことを教えると開発できそうだったのに」
「可愛くても変態だぜ? 朝から男達の前で胸のボタン外して下着見せてたんだぜ?」
言うとベールの少女はくすっと笑った。
「欲情したら、朝も昼も夜も関係ないでしょう。修道女だって人間ですもの。欲望を縛られていたら可哀想ですわ。もっと開放的にならないと! 服は脱ぐためにあるもの、下着は見せつけるためにあるものですわ!」
なんかズレている。
「……この街は変なヤツしかいねぇのかよ」
呆れるのを通り越し、色々と諦めて、アベルは階段の先にある薄汚れた小さな建物を眺めた。
店のように見えるが看板はない。
「ここが目的地ですわ」
ベールの女は説明しながら、階段を軽々と上っていき店の戸へ手をかける。
「ミスターはどこにいる」
「ミスターは自分の家にいますわ。その住所は孫ですもの知っていましてよ」
簡単に言われて、アベルは顔を
重要そうな内容を手軽に吐くやつには裏がある。
「彼は、ミスター・グレーバーなのか?」
「教えて欲しければ店へ入って。私の店ですの」
「……」
「今は訳あって知りあいに預けているけれど、ここは父がくれた私名義の店ですのよ。私がデザインした品が沢山ありますのよ。どうぞ、ごらんになって」
そして少女はゆっくりと顔を覆い隠すベールを外した。
生よりも死を感じさせる美しい
青白い顔色、闇を
頬に赤味などなく、薄い唇はラベンダー色だ。
額につけた
「ここは、欲情と
暖かみのない手で戸が開かれ、数々の
そのどれもが可愛らしくも色気があるものばかりだった。
「お好きなものがあったら、さしあげますわ」
入り口前のマネキンのすけすけな紐パンを指でずらして、少女は笑った。
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