2-3 天才と滅びた帝国
「
「
ぼそりとアベルが言うと、チェイが興味深げな顔になる。
「連経帝国のグリモワールといえば、やっぱ名運作の『
探り出そうとする情報屋に、アベルはケッと声を放った。
「
詩、詩人、詩人魔法という言葉を生み出したのが、この
彼の作品全てが名作であり、詩人達は
名運のグリモワールを持つ者は、他のグリモワールを所有することが出来ない。
それゆえ、名運の詩だけを収集するコレクターがいた。
彼らを『名運コレクター』と呼ぶ。
優れたグリモワールは、国をも滅ぼす武器となるのだ。
それゆえ、名運コレクターの多くは
「そういえば、
「……前の
名運の最高傑作である『最高時言』は、連経帝国を爆破した後に名運の弟子達によって分断されたという。
何分割されたかは誰も記していないが、修道詩会系の正なる詩が書かれた第一章『
「
「そりゃ……ええと嫌いだったからじゃねーの?」
本当の情報など言えるはずもなく、アベルはとりあえずそんな風に答えてみる。
「前の天主、
「まあ……ここだけの話だが」
アベルは声を潜めて、チェイの耳に口を近付けた。
「
「へぇ。
「十代だけどマッチョな色男で、色気を振りまきながら王宮を歩いていたそうだ」
「ほぉっ」
「后が彼を気に入り、
「お客さん、よくご存じで。あなた、漂う気からして、かなりの詩人ですよね。この冷気……もしかして
「まあな。俺は下っ端で拳銃をぶっぱなすしか脳がねぇけど」
チェイはアベルの右手の甲をちらりと見た。そこには緋色の小さな魔石が黒子のようについている。
大きさからみて小さい魔法しか入っていないと判断したのか、情報屋はそれ以上聞いてこなかった。
「情報の代金は、同じだけの情報か金だろ。俺が
「教えてもいいですが、近付けないと思いますよ。彼はここらのギルドの詩人を統括している魔導詩人ですからぁ」
詩人を統括するなんて、西の賢人にはふさわしい行為だ。
嘘を吹き込んで真の情報をただで手に入れ、アベルはギルドを出ていった。
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