第19話 加勢

暗闇の中で微かに声が聞こえた気がした。


「諦めるな!

傷つき倒れし者を癒したまえ。

再戦アゲイン』」


雷に打たれ、戦闘不能に陥ったはずだったが、私は意識を取り戻した。


私を『かばう』ように、誰かが目の前に立っている。彼が私を救ってくれたのだろうか。


「気がついたか?俺が前に出て奴を引きつける。お前は離れた所から魔法での攻撃を続けるんだ!」


そう言って、『風精シルフ』の真下に躍り出る。


彼が風精に向かって剣を掲げた瞬間、雷が落ちた。


「『治癒ヒール』。今のうちに攻撃するんだ!」


どうやら、剣を避雷針にし、自分に雷を引き付けるつもりのようだ。落雷を受けて傷付いたそばから自らに『治癒ヒール』をかけて回復している。


私は、離れた場所から『破裂バースト』を打ち続けることしかできなかった。


彼は、私が安全な場所から魔法を打ち込んでいる間、ただ落雷を受けているだけではなかった。


落雷の合間にヤーマンやナツに駆け寄り、『再戦アゲイン』の魔法で立ち上がらせ、前線から離脱させた。


ナツは精霊への効果は低いが遠距離から『火炎陣エルファイア』や『氷結陣エルアイス』で、ダメージを蓄積させていく。


ヤーマンは剣に属性を付与することを得意としているため、ナツのように遠距離から攻撃できる魔法を習得していなかった。そのため、『回復薬ポーション』や『魔法薬メンタルハーブ』などを配るサポートに回った。


最初は絶望的だった戦いも、彼の登場により、互角にまで持ち直した。


しかし、そう思った瞬間、場の空気が変わった。


風精が落雷で攻撃するのをやめ、その身に雷を纏いだしたのだ。


そして、巨大な光の塊となり、彼へと向かって落ちていった。


その距離は一瞬で詰まり。


「『鎧通し《パラシュ》』」


衝突の瞬間、彼が技の名を叫ぶ声が響いた。


そして、急激に風精の存在感が薄くなっていった。


この技は確か『守護騎士』が使う上級の技だ。どういう原理かは知らないが、敵の防御を無視してダメージを与えられるという。無属性魔法に近い性質であるため、精霊にもかなりの効果があったようだ。


今なら契約できるかもしれない。


私は風精の元へと駆け寄り、契約の呪文を唱えた。


「『契約ミスラ』」


今にも空気に溶け入りそうになっていた風精は、次の瞬間にはまた元の形を取り戻した。


私との契約が成功したため、存在としての力が戻ったのだ。

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