第13話 決意

教師となって50年が過ぎた。


その間に何人もの男を育て、世に送り出してきた。彼らは皆、成人し、良い男となった。


しかし、気付いたのだ。


子供の頃から育てた男に対し、母性のような感情はあれど、男として愛せるかというとそうではなかった。


好きなものや、嫌いなもの、強みや弱み、変な癖など、それらすべて知った男に対して、何かを求める感情が湧かないのだ。つかみどころのない謎めいた部分が無いと、どんなによい男であっても興味が持てないということだけが、分かったことだった。


私と釣り合う理想の男を育てることができない以上、もう教師を続ける意味はなかった。


そんな弱っていた私の心の隙につけ込んで、私に声を掛けてきた男が居た。


彼は過去に私を利用してきた男たちとは違った。


私は彼に夢中になった。


相思相愛だった。


そう思っていたのに。


やつは裏切った。


私より若い女に手を出したのだ。


そして私はまた一つ、ゴミを処分した。


そんな私の葛藤を知る由も無いだろうが、ひとりの女生徒が声をかけてきた。


「カナ先生。ため息なんてついて、どうしたんですか?」


今の魔導学校の首席であるナツだ。


「また悪い男に騙されてしまったのよ。どうして私はこんなにも男運が悪いのかしら。どこかに私に釣り合う男はいないものかしら。」


「カナ先生に釣り合う男性ですか…。同世代だと実力が足りないから、やっぱり年上とかがいいのかな。そういえば、先生って年齢不詳ですよね?おいくつなんですか?」


「年齢なんか魔法で超越してるわ。だから年上だとすべてジジイになっちゃうわね。外見も私に釣り合ってて欲しいから限界で30代までよ。」


「なるほど!他に男性に求める条件ってあるんですか?理想が凄く高そうですよね。」


「そうね。昔は理想が高かったかも。でも、これでも恋愛経験は豊富だから、もう男性にそんなに多くは求めていないわ。背が高くて、顔が良くて、頭が良くて、才能があって、お金持ちで、私を束縛せず、でもそばに居て欲しいときは必ずそばに居てくれて、美味しい料理を作ってくれて。これだけでいいの。それ以外の細かい所は気にしないわ。」


「うーん。これだけ理想の男性像が、しっかりイメージできてるのに、どうして悪い男に騙されちゃうのか不思議ですね。」


「そうなの。私にどこかいけないところがあるのかしら。」


「そんなことないと思います。悪いのは全部、カナ先生を騙す男です!

そうだ!悪い男がいない世の中を作るために、世界征服したらどうかな?」


なるほど、世界征服か。悪い男が居なくなれば、相対的に良い男の数が増える。


この私の美貌と才能で、世界を変えてやれば良いのだ。


そして、世の中の良い男をすべて私のものにしてやろう。


「そうね。私の力で世界を変えてあげましょう。」


「私にもお手伝いさせてください!」


「ええ。よろしくねナツ。」

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