第9話 古代文明の考古学者②

久しぶりに家の『インターホン』が鳴った。


扉を開けると、そこには、変装していたようだが、この国の王子が立っていた。


そして、この俺の弟子にしてほしいと言う。


俺は、ハクナ城に侵入する必要があった。


侵入するだけなら堂々と正面から入ればいいだけだが、牢獄に囚われているあいつを助け出す必要があった。


そのための切り札になるかも知れないと考え、王子を弟子にすることにした。


とは言え、牢獄の件は今すぐどうなるものでもない。俺は予定通り、【マタタ古代遺跡】の異変を突き止めに行くつもりだった。


だが、その異変は、遺跡だけに起きたものでは無かったようだ。


成り行き上、先に【マテリアルマイン】に行くこととなった。


ついでに王子の実力も確認しておく必要があった。魔境化したばかりの場所は、滅多に強い魔物は出ないはずだから、実力を確認するには丁度良い。


しかし王子は、予想通り大して戦いの役には立たなそうだった。あろうことか敵の目の前で、武器を取り落としてしまった。


そもそも『屍鬼グール』は動きも緩慢で、武器を持っていれば子供でも勝てるような魔物だが、少しだけ助けてやることにした。


王子に向かって振り上げられた屍鬼の腕の関節を『狙撃ポイントショット』で撃ち抜く。


不死族アンデッド』は痛みを感じないというが、関節を壊せば、その先に力を伝えることは出来ない。


狙い通り、王子への攻撃は、ただその肩を撫でただけとなった。


その後の王子の動きは、子供にしてはまあまあ良かった。


これまで剣を振る練習くらいはしていたのだろう。


まずは、魔物に対して怯えないようになれば、遺跡に連れて行っても邪魔になるまい。


鉱山の魔物を全滅させるほど戦わせれば、形にはなるだろう。


俺は王子に先を促した。

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