第7話 帰れない城
「今は誰も城へ入れる事は出来ない。帰れ。」
日中は国民に解放されているはずのハクナ城の門は閉じており、その前には門番のヤーマンとセリアが入り口を守るように立ち塞がっている。
今、乱暴に帰れと言ったのは、いつもなら気さくに話しかけてくれるヤーマンだ。
「おい、どういうことだ?この城は国民なら自由に出入りできるはずだろう?」
「何度も言わせるな。帰れ。」
モララーが食い下がるが、ヤーマンは帰れの一点張りだ。何があったのか分からないが、このままでは冒険どころではないだろう。
僕は城の中に入れてもらうために、変装を解いて、身分を明かした。
「ヤーマン。変装して城を抜け出してしまってごめんよ。僕だよ。ウーヤンだ。」
「ウーヤン様は、城内に居ます。お帰りください。」
「セリアまで、何の冗談だよ。ほら、よく見て、僕がウーヤン。お城にいる方のウーヤンは影武者のモッコスなんだよ。」
「お帰りください。」
「ウーヤン。いくら王子と名が同じだからと言って、流石に王子を騙るのはまずいだろう。捕縛されかねないぞ。」
モララーの言う通り、僕が偽物なんだとしたら、捕らえられてもおかしくないだろう。だが、僕は本物の王子ウーヤンだ。だけど、ヤーマンもセリアも、僕のことを覚えていないかのような態度だ。一体どういうことなんだよ…。
「これまで、こんな事は一度もなかったんだがな…。この分だと、こいつらが動いてくれるとも思えん。仕方がない。状況を見極めるためにも、先に【マテリアルマイン】の様子を見に行くぞ。鉱石が少しでも手に入れば、武具を作れるかもしれんしな。」
本格的に魔物と戦うなら、ちゃんとした武装が必要だろう。
僕の今の装備は、城を出るときに護身用に持ってきた『ショートソード』だけだ。
まだ体が小さいからショートと言っても僕には丁度良い。武器はこれで良いとしても、問題は防具だ。今着ているのはただの服。
転んだ時に擦り傷ができないとかの防御効果はあったとしても、魔物の爪や牙はあっさりと通してしまうだろう。
それに、【マタタ古代遺跡】に現れる機械は、金属でできているのだ。せめて、盾だけでも持って来れば良かった。
不安で仕方がなかったが、お城に帰ることもできないのでは、モララーと行動を共にする以外に道は無い。僕は覚悟を決めて、【マテリアルマイン】へ同行することに決めた。
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