第4話 弟子入り

「僕はマタタ古代文明に、とても興味を持っているんです!弟子にしてください!」


ピンポンダッシュという初めて聞く、おそらくマタタ用語であろう単語に興味をそそられたが、まずは開口一番、僕の目的の一つであるモララーへの弟子入りを頼み込んだ。


「ほう。一つ確認するが、お前は戦いの役に立つのか?」


なぜ研究に戦いが必要なのかは分からないが、ここで嘘をついても仕方がない。


「僕は実戦の経験はありませんが、剣の修行はやっていました。それから、回復の魔法を使うことができます。」


「回復魔法を扱えるのか。それは、ちょうど良い。これから【マタタ古代遺跡】の調査に行く所だった。ついてこい。」


もしかしたら、こんな子供の弟子入りなんて断られるのではないかと言う心配はあったのだが、快く受け入れてもらえた。


モッコスが身代わりを引き受けてくれたことと言い、ヤーマンやセリアに正体がバレなかったことと言い、今日の僕はとてもついている。


早速、街を出て【マタタ古代遺跡】に向かうのかと思ったが、まずは物資の買い出しを行うらしい。


最初の目的地はモララー行きつけの『道具屋カズコ』だ。


女主人が切り盛りしていて、冒険に役立つ『回復薬ポーション』や『魔法薬メンタルハーブ』だけでなく、日常雑貨やお酒など、さまざまな物が買えるお店で、品揃えが良いため、かなり重宝していると、モララーが教えてくれた。


「あら、モララーじゃない。この前、『雷の魔石』を買ったばかりなのに、また来てくれるなんて嬉しいわ。もう私が恋しくなっちゃったのかしら?」


店に入るなり、化粧の濃い…じゃなくて、大人の雰囲気の女性がモララーに声を掛けた。彼女がカズコだろう。


『雷の魔石』とはその名の通り【雷撃サンダー】の魔法を封じている石で、通常は投げつけることで、魔力が使えない者でも、雷の魔法を放てる魔導具の一種だ。一度使うと、その効力は失われてしまうので、多用はできないが、護身用に持ち歩く人も多い。


けれど、モララーの場合は、使い方がちょっと違うのだ。雷の魔術と、機械は非常に相性が良いようで、機械を動かすために必要な動力として使えるらしい。ただし、雷の力がある許容量を超えると、機械が壊れて二度と使えなくなるとも言う。


「ああ、その『雷の魔石』を使い切ってしまってな。補充しに来た。そうだな。今回は50個ほどもらおうか。」


「そんなに買ってくれるの?私をデートに誘いたくて気を引いてるのかしら?嬉しいわ。ちょうど10000ゴールドね。」


「ツケで頼む」


「ちょっと、冗談でしょ?私のお店でツケなんて無いわよ。それにそんなに大量の魔石、何に使うつもりなのよ。」


「実はな。どうやら、マタタ古代遺跡が魔境化してしまったようなのだ」


「え!?そんな…。魔境化なんかしたら、まだ発掘されてない遺物が魔物に壊されてしまうんじゃ…」


僕は、憧れの機械の宝庫が、魔物に荒らされてしまうのがとても心配で、2人の話に割り込んでしまった。


「あら?可愛い坊やね。モララー、私と言うものがありながら、いつの間に子供なんかつくってたのよ?」


「こいつは弟子だ。今日からだがな。そう言えばお前、まだ名前を聞いてなかったな。」


そうだった。名前か…。今はモッコスとして外に出ているからモッコスで良いだろうか?


でも、もう城の外に出てしまってるわけだし、ウーヤンと名乗っても良いか?


僕はこう見えて自己顕示欲が強い。マタタ古代文明にあったという、『エスエヌエス』があれば『ジドリ』を公開して拡散したいくらいなのだ。

だから、嘘の名前を使っても、うっかり本名を言ってしまうかもしれない。

そもそもウーヤンという名前はこの国では珍しい名前というわけでもないのだ。名乗ったとしても、まさか本物の王子とは思わないだろう。


「はい。申し遅れました。僕はウーヤンです。今日からモララー師匠の弟子にさせていただきました。よろしくお願いします!」


「きちんと挨拶できて偉いわね。モララーなんか機械にしか興味を示さない変態の所より、私の所で働かないかしら?」


「挨拶は済んだか?話を続けるぞ。」

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