仕事
「今日は仕事するから、家の中好きに使って良いからな」
朝ご飯の後、そう言われた。
この家には本がたくさんある。寝室にも、物置にも、仕事部屋にも、リビングにも大きな本棚があった。物置には本が大量に詰められていて、仕事部屋の横の部屋は図書館のように本棚が並んでいて、とにかく本だらけだった。
気になったのは物置に少女漫画しかない棚があった。まだお昼まで時間があったし、少し興味が湧いて一巻めを手に取った。
一気に5冊も読んじゃった。ふと時計を見るともう11時。
急いでキッチンに向かって、冷蔵庫の中身を確かめる。やっぱり、足りない。醤油とみりんも昨日使い切っちゃった。
静かに仕事部屋の扉を開けると、パソコンに向かう彼が見える。
彼はそれに気付いてない。耳から白い線が出ていて、音楽を聞いているみたいだ。パソコンには彼が入力している文章が私が読むより速く増えている。
肩を優しく叩く。ビクッとして私を見た。
「どうした?」
この人と話すときいつも緊張してしまう。気の抜けたようなたれ目なのに私を真っ直ぐ見つめて、逸らさないから。いつも胸がギュッとなる。
「あの、買い物に行きたい、です」
「そうか、何買いに行くんだ?」
「お昼ご飯の材料です」
「俺もついて行こうか。重いだろ」
「いえ、そんなに買わないので」
彼はそうか、と呟いて財布から3000円取り出した。
「ありがとうございます」
「おう、気をつけて行ってこい」
私は外に出る準備をして、玄関の扉を開けた。
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