晩飯

晩飯は他人丼というものらしい。


「えっと、玉ねぎを繊維に沿って切ってください」


半分に切った玉ねぎをくし切りにする。

玉ねぎを切ると涙が出るってよく言うけど、シミるだけで意外と出ないな。と思いながら、半分まで切ったところで、親指の腹を切ってしまった。


「あ」


「だ、大丈夫ですか?!ば、絆創膏、ティッシュ、消毒液!」


「大丈夫だ」


ティッシュで押さえておく。


「この家に絆創膏は無い」


「どこが大丈夫なんですかっ、止血しててください。あとは私がやりますから」


「……悪い」


沸騰したお湯にほうれん草を入れていた彼女は俺が使っていた包丁でトントン玉ねぎを切っていく。


「うまいな」


「そうですか?」


そのまま人参、豚肉と、見たことが無いくらいの速さで切っていく。テレビの料理研究家のような動きだ。

目が回るような速さで料理が完成していく。いつの間にかほうれん草のお浸しも完成していた。


「食べましょうか」


ご飯をよそって、その上に他人丼を載せていく。良い香りがしてさっきから腹の虫が黙らない。

食卓に着いて、手を合わせ、いただきますと二人で呟いた。

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