人攫い
黙ったまま彼女の鞄を持った。
攫う、からそのままイメージすると、山賊のように肩に担いで行こうかと思ったが、やめておいた。
手を握って連れて行く。柔らかいというより、骨ばっていて弱々しい。
彼女は素直について来た。彼女は俯いたままだった。
エレベーターに乗って、鍵を開けて、家に入る。明かりを点けると、しまった、と思う。少し、いや、かなり、色々なものが散乱していた。服、紙屑、雑誌などが人が通れる程度に床に散りばめられている。
「悪い、最近掃除してなくて」
「いえ……」
取りあえず寝室のドアを開けて彼女を入れる。寝室は寝ることと着替える事にしか使っていない。散乱はしてない。
「制服は寝にくい、よな。妹の寝間着があるから待ってろ」
寝室に彼女をおいて、物置と化している部屋に入る。
たまに泊まりにくる妹が、この前忘れていった寝間着を手に取る。また寝室に戻る。
「はい、これ、着とけ。俺はまだ寝ないからそのベッド使え」
「あ、あなたはどこで寝るんですか」
「……お前には関係無い。じゃ、おやすみ」
そう言ってドアを閉めた。俺は暇を潰すために、リビングでテレビを見ることにした。
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