また、旅へ

あれから1年が経とうとしていた。

「おっっっせぇえぇ!!!」

俺は絶叫する。あのじじい、力取り戻すのにどんだけ時間かかってるんだよ!ふざけんな!こちとら鍛えすぎてLvがあがりまくっちゃったよ!

 

そんな俺に、一通の手紙が届いた。

“勇者へ

   遅くなってごめんね。今日から魔王軍進軍しま~す。よろしくね♡

                      あなたの愛しの魔王ガッテムより”


あいつ、まだ勘違いしてやがる。と言うか、内密にしろつったろ、何堂々と俺に手紙出してんだよ。

 まぁ、いい。これでやっと冒険に行けるんだ、そうワクワクしながら俺は冒険の準備をする。そんな時だ。

“聞こえますか、聞こえますか。勇者よ。”

こ、この声は!!!

“私です、女神シュテルです。今再び魔王がこの世界を支配しようとしています。一体誰が封印を解いたのか分かりませんが、魔王軍が世界を支配する前に次こそは魔王を討伐しなさい。”

来たぁぁぁあ!!これだよこれ、俺が求めていたのは!!女神のお告げから始まるこんな感じの冒険だよ!!!

“てか、マジでどこの馬鹿だよ、封印解いた奴よぉ、チッ。勇者よ、封印解いた愚か者を見つけたら私の前まで引っ張てきなさい。では”

う~ん、俺死んだかも。なら、死ぬ前に思う存分冒険を楽しもうっと。ポジティブ思考大事。

そうだ、前回も一緒に冒険した仲間にも声をかけてみよう。集まらないかもしれないけど。


「え~、う~ん。まぁ、いいよ~。」

最初に向かったのはハープの家だ。ハープは小柄な幼児体系、水色の髪をした色白の人間の女の子だ。“美しい”と言うより“可愛い”という言葉が似合う。

「何ジロジロ見てんの~、キモイよ?」

すんません。


「・・・・・・・・チッ、準備する。」

次に訪れたのは魔法使いのシャル。この子は赤い髪がよく似合うエルフの女の子。人間で言うと16歳くらいかな。

「こっち見んじゃねぇ、眼球えぐるぞ。」

めっちゃ殺意高いじゃん。俺、この子に何したんだろう。


「はぁ、しょうがないな。」

最後に訪れたのはガルドだ。褐色の肌、白い髪の大柄な体の大人の女性だ。実にタンクらしい。おまけに体の至る所にキズがある。ますますタンクらしい。

「何をボーッとしてるんだ?準備するから少し待っていてくれ。」

あれ、もしかしてガルドだけ俺に優しいのかも。いや、皆がひど過ぎて感覚がマヒしていたが、これが普通なんだよ。

意外と皆ついて来てくれるらしい。かなりイヤイヤみたいだが。


 久しぶりに集まった昔の仲間たち。

「久しぶり~、シャル、ガルド。」

「この前もお茶をしたばかりだろう、ハープ。」

「はっはっはっ、元気そうで何よりだよ、二人とも。」

何か俺だけ疎外感を感じる。

「もしかして皆、魔王討伐の後も交流ある感じ?」

「えっ?あ、ああ、まあな。」

気まずそうにガルドが答える。続けて

「も、勿論、カリバーも誘ったぞ。でも、一向に返事が返って来なくてだな。」

なんだ、俺のせいじゃん。ごめんな、ガルド、気を遣わせて。

「だから言ったんだよ、そんなクズ誘う必要ないって。ガルドは優しすぎるんだよ。」

「そう言うな、シャル。彼も私たちと一緒に命がけで魔王軍と戦った仲間じゃないか。」

やだ、ガルドさん素敵!!一生付いていきます!!

「それは嫌かな。」

真顔で否定するのやめてぇ!!

「ねぇねぇ、早く行こ~う。次こそは魔王討伐するんでしょう?」

しびれが切らしてハープが言う。

「そうだな。よし、いざ出発!!」

「お~う。」

「仕切ってんじゃねぇよ。」

「まあまあ、そう怒るな。」

大丈夫かな?このパーティー。


 そこからは、実に冒険らしかった。旅の道中に出てくる魔物を倒し、時には野宿、時には立ち寄った村で休息をとる。ああ、冒険してる、冒険してるよ俺!!

そんな感激をしている俺に、ガルドが

「何か随分と変わったな、カリバー。前は冒険するのをあんなに嫌がっていたのに。」

続けてハープも

「本当だよね~、前はあんなに足手まといだったのにね~。今じゃ、しっかりと動けてる~。」

さらに、あのシャルまで

「チッ、まぁ、確かに。この前会った時とは別人みたいだな。だいぶ鍛えなおしたみたいだし。」

えっ、皆どうしちゃったの。もしかして俺、明日死ぬの?

そんな事を考えながらも結構嬉しくなっちゃった俺は、その後の戦闘でめちゃくちゃ張り切った。

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