いざ旅へ

俺の旅はすこぶる順調だった。だって魔物出ないんだもん。休むために魔王封印するためによった村々を辿っただけだもん。そんなこんなで一週間後には余裕で魔王の城に着いてしまった。

「すげぇー、でっけぇ城。」

思った感想をそのまま言う。でも、流石は魔王城。不気味な雰囲気を醸し出している。

「で、どうやって封印解くんだ?」

しまった、何も考えずに来てしまった。だが、今更帰る訳にもいかないので、俺はとりあえず城の中に入った。


 城に入り探索すること、数時間

「広すぎだろ、ここ」

疲れた。なんなんだよこの城、部屋ありすぎ、こんなに要るわけないだろ。廊下入り組みすぎ、城の住人でも迷うわ。そんな悪態をつきながら、俺は58個目の扉を開ける。

「おぉ、これは…」

その広間には馬鹿でかい水晶が置いてあった。さらに後ろの方には王座らしき椅子があるではないか!!!

「絶対これじゃん。」

そう言って俺は、水晶に近づく。近くで見るとより一層大きく見える。

さて、これからどうするか。この水晶をぶっ壊せば良いのか?

「よし、やるか。」

考えていても仕方ない。俺は剣を鞘から抜いて思いっきり振りかぶり

「そいっ」

ダサい掛け声と共に剣を振り下ろす。

 パッカーン

おかしいだろ、その効果音。そうツッコむと同時に水晶が割れた。

「クハハハハハ、よくぞこのガッテムの封印を解いてくれた。礼を言うぞ、人間。」

割れた水晶からおっさんが出てきた。おぉ、魔王っぽい。

笑ってた魔王は俺を見る間に驚いた顔になる。

「ええっ、勇者⁉なんでお前、ワシの封印解いてんの?」

「魔王、何も言わずにこの世界をまた支配してくれ。」

「えっ、何言ってんのお前。ただでさえ悪い頭、さらに悪くしたの?」

お前も言うのかチクショウ。前の俺はそんなにバカなのか?いや、今の俺もかなりバカなことしてるけど。

「お前がいないと寂しいし暇なんだよ!!!頼むから世界を支配してくれ!!!」

「そ、そんなぁ。い、いきなりお前がいないと寂しいなんて。そ、そんな事を言われるとワシ困っちゃう。う、噂の通り積極的なんだな、勇者よ。」

おい、何勘違いしてんだ、じじい。辞めろ、顔を赤らめるな。

「だが、世界を支配したくてもな。封印から解かれたばっかりのワシには力不足だ。ワシの力が戻るまで待っておれ。暇ならそのなまった体を鍛えなおしておくんだな。」

確かに魔王の言う通りだ。魔王が勇者にアドバイスしてんじゃねぇよ。

「勇者が魔王復活させてんじゃねぇよ。」

ごもっともだ。

「分かったよ。じゃ、よろしくな魔王。あ、後、俺が封印解いたの内密にな。」

「うむ、分かった。後、そ、そなたには特別にガッテムと呼ぶことを許可してもよいぞ。」

うるせぇよ、そんなツンデレみたいな反応すんじゃねぇよ、殺すぞ。

「じゃあな。」

そんなじじいを無視して俺は屋敷に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る